ここ最近、ビルマネジメント業界で人手不足が深刻化するなか、それを補う清掃や警備といったサービスロボットが大規模商業施設やオフィスビルなどに導入され始めてきている。警備業界大手のALSOKでは、ロボットやIoT機器をいち早く採り入れ、従来の施設警備だけでなく、ビルの綜合管理を一体的に行う取り組みを進めている。
第13回日本ファシリティマネジメント大会「ファシリティマネジメント フォーラム2019」が2019年2月、東京・江戸川区のタワーホール船堀で開催された。本稿では、綜合警備保障(以下、ALSOK)の「ロボット・IoTを活用した施設・設備などの綜合管理」と題した講演を振り返る。登壇者は、ALSOK開発技術総括担当の水谷紀彦氏(常務執行役員)。
ALSOKは1965年の創業。現在では、本社以外に、9つの地域本部、64支社、37支店、251営業所に営業拠点を置く。近年は、国内だけでなく、ミャンマー、タイなどの東南アジアにも積極的に進出している。
警備業の中で、警備員・守衛を現場に配置せずにセンシング技術などで警備する「機械警備」は、創業から2年後の1967年にスタート。以来50年の長きにわたり、「常に変化する時代のニーズに適(かなう)うべく、警備業を中心としつつ、新たな分野におけるサービス・商品を幅広く提供する」を経営の基本戦略に位置付けて展開してきた。実際に1970年代の開閉センサー(マグネット)をはじめ、80年代には赤外線センサーの設備制御、90年代には静止画転送、2000年代には監視カメラ、2010年代には画像センサー、画像監視・威嚇ライフリズムと、ICTの進化とともに機械警備は革新を続けている。
現在では、ビッグデータ時代の到来を見据え、監視カメラの画像をAIで分析し、不審な行動の検知を行うことで、これまでの様な事故/事件の拡大を防止するだけでなく、事故/事件が起きる前に未然に防ぐ技術の社会実装に取り組んでいる。その先には、次世代通信技術「5G」活用も見据え、既に実証実験に着手している。
警備業そのものをみると、その業態は警備業法によって1〜4号の業務に分かれ、日本における警備業務の需要の約半分を占めている「1号業務」は施設警備、巡回警備、保安警備、空港保全警備、機械警備を担う。他に、交通誘導/雑踏警備の「2号業務」、現金などの警備輸送を行う「3号業務」、身辺警護や緊急通報サービスの「4号業務」がある。
国内における警備業界の現状については、事業者数はおよそ9500社。警備員数は、警察官と自衛官を足した約50万人を超える約55万人で、売上高も2017年で3兆4761億円に達し、年を追うごとに市場は拡大している。一般的な認識として警備業は国民の自主防犯活動を補完または代行するサービスと見なされ、社会における生活安全産業として定着しているといえる。
警備業だけでなく、ビルの設備管理も含めたビルメンテナンス業界全体では、市場規模は約4兆円弱で、その4割が清掃管理となっており、3割が設備管理。ここ数年は、複合型商業施設の建設ラッシュが続いており、それに伴ってビルメンテナンス市場も成長傾向にある。
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