ALSOKが構想する都市空間全体のセキュリティ「現代版火の見やぐら」、五輪に向けた警備ロボの活用もファシリティマネジメント フォーラム2019(2/3 ページ)

» 2019年04月23日 06時23分 公開
[石原忍BUILT]

サイバー犯罪急増で、サイバー空間のセキュリティは今後のキーワード

 一方で、警備業を取り巻く社会情勢を鑑(かんが)みると、2017年に全国の警察が認知した刑法犯は91万5000件で、前年よりも8万件減少し、過去最少を記録。その後、2018年上期には半期の統計で初めて40万件を下回った。減少の要因には、窃盗犯が大幅に減ったことがあり、防犯カメラの設置台数が街中に増えたことで、ひったくりの犯罪抑止につながっていることが指摘されている。

 ただ、サイバー犯罪については、2014年に7905件と一度減少に転じたものの、その後増え続け、2017年には9014件と、過去最多となるほど急増している。サイバー空間では、いつ被害に遭ってもおかしくないのが現状で、早急な防止策が求められている。

国内外の主なサイバー犯罪

 ここ数十年で発生した主な国内外のサイバー犯罪では、2016年のドイツで原子力機関に対する攻撃、2017年のウクライナで電力会社のPCが乗っ取られ遠隔操作されるケースなどは有名だろう。国内でも、2011年の衆議院サーバハッキングをはじめ、2015年の日本年金機構への攻撃、2017年に入ると大規模ランサムウェア攻撃、仮想通貨の不正流通など、さまざまな形で脅威は拡大している。

 安全以外の別の観点でも、警備業界の将来には課題が残されている。人口減と高齢化により、業界を担う人手不足は深刻化しており、とくに保安の業務は全業種の中でも有効求人倍率が最も高く、2018年11月時点で8倍を超えるほど、警備員は足りていない。

人手不足の深刻化。保安の仕事はとくに有効求人倍率が年々右肩上がり

 こうした課題を解決すべく、ALSOKでは、IoTを導入した施設設備の「綜合管理」を進めている。ALSOKは創業時から現在に至るまで、オフィスビル、商業施設、金融機関、ホテルなどの多様な施設に警備員を常駐させ、防犯/防災の監視や出入り管理だけでなく、各種施設の監視など、契約先の安全かつ快適な環境の保全に努めている。今後は、「人による常駐警備のノウハウに、IoT機器を組み合わせ、ウェアラブルカメラ、ドローン、ロボットでインシデントの発生や予兆にいち早く対応する最先端の警備を提供する」ことを目標にしている。

 その一例として、1982年から研究開発に着手し、2015年にリリースした警備インフォメーションロボット「Reborg-X」がある。Reborg-XにはIoT機器として、威嚇灯、スピーカー、パンチルトカメラ、集音マイク、タッチパネル、ライト、各種センサーが搭載されている。

ALSOKが開発した警備インフォメーションロボット「Reborg-X」

 移動は、施設内の地図を事前にロボットに記憶させることで、自律走行機能を利用した自動パトロールを行う。ルート上に人や物などの障害物を発見した場合は、スピードを落として接触しない様に自動で避ける。固定式のロボットではなく、自律走行タイプのため、広範囲をカバーすることが可能となる。

 監視機能では、各種センサーによって、設定エリア内の侵入者検知や顔認証による人物特定で、不審者などを早期に発見。あらかじめ設定してある警戒ラインを越えた場合には、音声で警告したり、威嚇灯を点灯させる。

 2017-2018年に羽田空港で行った実証実験では、侵入者検知や施設案内の一部業務を行った。インフォメーション機能は、装備している液晶タッチパネルや音声を用い、来訪者に施設内を案内。受話器も内蔵しており、ロボットを介して施設のオペレーターや警備員と通話することができる。2019年2月には、都営地下鉄大江戸線の新宿西口でも試験的な導入を試みたという。

羽田空港ロボット実験プロジェクト

 さらに2020年東京五輪に向けて、駅空間内での案内機能の強化や自然災害が発生した際の避難誘導のテストも予定されている。

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