現場周辺の“地中埋設物”をタブレット上にARで可視化、清水建設建設×MR(2/3 ページ)

» 2018年11月29日 09時00分 公開

作業者が持ち運ぶ受信機はポケットに入るサイズ

 衛星からの搬送波は「L1」と「L2」の2種類に分かれる。L2は収束が早く精度も高い一方で、コスト増や機器の大型化といった課題があるため、L1受信機を導入。L1は、機器を立ち上げてから収束するまでの“初期化時間”に30〜60秒ほど要するが、大きな問題にはならないと判断された。L1の大きな利点は、アンテナや受信機が小型化され、ポケットに入るほどのコンパクトさ。作業者が現場で持ち運ぶ場合でも、邪魔にならない。

採用したL1受信機とアンテナ

 埋設図面の呼出し・表示では、図面データをクラウドサーバ内に保存し、インターネット経由で移動局側のタブレット端末に送るイメージ。この図面の登録方法は、現場で作成した埋設物の台帳図を画像データに変換し、そのデータ四隅の位置情報と合わせ、システム管理者に送付する流れ。

システム全体構成と埋設物データ

 最後に、風景への埋設物の投影については、現場でシステムを立ち上げれば現在位置に関係する図面が、タブレット端末の画面に自動表示される。現在位置にある図面リストの中から必要なデータをタップすると、その2次元の平面図に操作者の位置が赤いマークで示される。そして画面右下にあるARボタンを押せば、タブレットのカメラで撮影している現実の風景に、埋設物がオーバーラップして可視化される。

 具体的なシステムの運用では、基準局のアンテナは現場事務所の屋根上などの空が見える場所に設置。移動局のアンテナは操作者のヘルメットに仮付けし、受信機は胸ポケットなどに入れる。移動局のアンテナとポケット内の受信機は有線ケーブルで接続し、受信機とタブレット端末はBluetoothによる無線通信でつなぐ。操作者は手をふさがれることなく、両手で自由にタブレット端末を扱える。

 通信環境では、基準局1つに対する移動局数の制限もなく、距離10km(キロ)以内であれば異なった現場で1つの基準局を共有することも可能だ。

システム運用の具体例

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