“空間デザインの民主化”を掲げるSAMURAI ARCHITECTSが提供する画像生成AIサービス「Rendery」は、画像やスケッチ、言葉などをもとに建築パースを自動生成する。企業ごとの建築様式を反映したAIモデルの学習も可能で、大手不動産デベロッパーやハウスメーカー、ゼネコンなどで幅広く活用されている。
SAMURAI ARCHITECTS(サムライ アーキテクツ)は、「第9回 JAPAN BUILD TOKYO−建築の先端技術展−」(会期:2024年12月11〜13日、東京ビッグサイト)で、建築特化型の画像生成AIサービス「Rendery(レンダリー)」を紹介した。
建築パースは建物のデザインを立体的に検討し、関係者との合意形成を図る上で重要な役割を果たす。これまでのパースは“画像”として作られるのが一般的で、検討の場でデザインやイメージを変更することができず、事務所に持ち帰って修正して再度打ち合わせの場を設けるなど設計が長期間化する要因となっていた。
Renderyは生成AIを活用することで、パースを条件に応じて自由に変更できる。プレゼン時にコミュニケーションの活性化がもたらされ、設計者と発注者のギャップもその場で解消できる。自動で生成されるので誰でもパースを扱えるようになり、これまで自分で作ってこなかった営業や企画でも、設計案に関与する機会を増やせる。
AIに与える質問や指示などマルチモーダルのプロンプトは、写真やスケッチ、3DCADデータ、短い文章などにも対応している。仮にパステルカラーを使った店舗のパースを作りたいのであれば、淡いピンク色のアイスクリームの写真と指示をAIに与えると、その色を基調とした壁紙やイスの店舗デザイン案を生成する。
また、画像内の一部要素を抽出してパースに反映できる。使い方としては、例えば日中の明るさのパースに夕暮れの写真を与えて、夕刻時のパースに変更するなどだ。
建築に用いるパースの作成は外注が多く、完成までに数週間の時間と多額の費用を要する。期間やコストを掛けて作っても画像なので、完成イメージに近づけるためには何度も修正依頼する必要があった。Renderyはリアルタイムに修正が反映されるため、プロジェクトの長期化やコスト超過といった問題を解消する。或る大手不動産デベロッパーでは、外部に委託していたデザイン業務を内製化することに成功したという。
Renderyのすごいところは、与えられた画像から特徴を読み取り、パースを作るための文章のプロンプト自体を作れる点にある。AIによる画像生成は「どのようなプロンプトをAIに与えるかがポイント」となる。Renderyでは、プロンプトから詳細プロンプトを作成と画像からプロンプトを作成の2パターンに対応。何もない“ゼロ”の状態から手探りでプロントを考えて入力するのに比べ、AIに適切な指示を与えられるため、精度の高い出力結果が期待できる。
AIのパース生成でよくあるのが、複数案を作成したときにデザインがそろわず、それぞれが微妙に異なって統一感なく出力されてしまうことだ。Renderyはプロンプトでデザインの基本となる画像を生成し、ドラッグ&ドロップでアップロードすると、その画像の雰囲気をベースに「参照画像の強さ」機能で調整できるため、デザインの破綻が起きにくい。
また、建築パース作成がほぼリアルタイムに行えるということは、パースをコミュニケーションツールとして使えることでもある。建築の設計段階ではさまざまな立場の人が集う。関係者全員が方向性を統一するには設計案の試行錯誤が欠かせない。その場でメンバーの要望を取り入れ、Renderyでリアルタイムに反映させて確認していけば早期の合意形成が実現する。
Renderyでのプロジェクト管理はホワイトボード形式を採用。プロジェクトメンバーが集めた全ての資料やデザイン案を1カ所に集約し、アイデア共有や生成したパースの更新もできる。
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