施工の場合であれば、準備からはじまり、仮設、解体、杭・掘削・山留、基礎・逆打、RC躯体、免震、鉄骨、外壁・外部建具、設備、昇降設備、内装・内部建具、シミュレーション、外溝、VR、3Dプリンタまで、16の項目で構成され、この工事で活用を検討した、実際に行ったなどを表にまとめる。これにより、各現場での取り組み状況が一目で分かる以外にも、所長や作業員同士が情報交換することにもつながっている。
現在、鴻池組で100%何らかの形でBIMを活用している設計領域では、目的を持って取り組むことを念頭に、モデル、一般図、申請図、実施図、干渉チェック、デザイン検討、シミュレーション、3D模型、モデル合意、パース作成、アニメ作成、VR、構造積算渡し、統合モデルの14項目を設定している。
追跡表の結果からは、現場がどの技術に重点を置いているか、苦手な分野が何かが一目で判明する。まだ実績のない分野については、ICT推進室でサポートをしていく。
しかし、現場にこうしたBIMを中心としたICT技術の取り組みを勧めても、返ってくるのは、いまだ否定的な意見の「No!無いBIM」が多いという。なぜなら、現場の人たちは、既に頭の中にBIMと同様のイメージ(脳内BIM)があるため、BIMモデルを持って来られても、脳内イメージとの答え合わせでしかないためだという。
では、現場で答え合わせではなく、BIMモデルを採用して検討・検証を行ってもらうためには何が必要か。内田氏はこれまでの経験から、「そのためには、BIMのメリットなどの新たな発見、関係者間の共有による今までにない気付き、人の手では決してできないICTの有効性を理解したときに、導入につながることが少なくない。一度首を縦に振れば、BIMやICTの講習でも要望が出てくるほどに思考が切り替わる」。
後半ではBIM/ICTの事例を紹介。BIMを導入した博物館の案件では、展示品の山車(だし)に図面が無かったため、3Dレーザースキャナーで3次元データを取得。簡易なモデルを作り、展示棟へ出し入れ可能かの検討を行った。最終的にはレンダリングして、360度動き回れる画像で展示室に収めた状態を確認。同じ案件で、「GLOOBE Model Viewer」で、館内のサイン計画を施主に確認してもらうことなども試みた。
360度で現場が見れる手法の評判が良いことから、鴻池組では専用のWebページ「KOCo LOOK(ココルック)」を開発。クライアントにQRコードを渡して、スマートフォンやタブレットなどからサイトにアクセスしてもらうことで、現場の状態や竣工後の姿を360度で確認してもらうことが手軽にできる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.