鴻池組では、「ICT推進課」を2017年に開設し、BIMとさまざまなICT技術とを組み合わせ、現場での活用検証を進めている。BIMに関しては、独自に「BIM取り組み計画書」を策定し、設計・施工BIMをはじめ、3Dプリンタによる模型の出力や施主へのVR提案なども含めた、ICTへの取り組みを可視化できる体制を整え、ICTによる業務改革を推進している。
福井コンピュータアーキテクトは2018年11月13日、「Japan-BIM事例フォーラム BIMモデル最新活用事例−BIMの全体最適に必要なモデルの進化と将来のヒント−」を東京・千代田区のステーションコンファレンス東京で開催した。フォーラムでは、同社のBIM建築設計ソフトウェア「GLOOBE(グローブ)」のユーザーなどが最新BIM事例を紹介した。
当日のアジェンダから、鴻池組のICT/BIMの取り組みを紹介する。登壇者は、建築事業総轄本部 工務管理本部 技術統括部 ICT推進課 課長代理・内田公平氏。
鴻池組では、2013年に「ICT推進課」の前身となる「BIM推進課」を立ち上げ、GLOOBEを使ってまずは設計領域のBIMシステム構築および管理、BIM活用の研究と推進、BIMスキルアップ教育に着手した。
当時は、施工前までのBIM適用を目標に据え、ボリューム検討から単線図によるパース作成までの一連作業をBIMモデルで実践。この中で、GLOOBEの機能により、面積や容積率の確認、リアルタイムでのチェックといったBIMによる設計の効率化が行われた。その後、「日影検証」「天空率」「逆日影の確認」なども、ソフトのバージョンアップとともに可能になった。
内田氏は、「5年前の時点でGLOOBEは、Photoshopで加工しなくてもモデリングとパース制作が2〜3日で完了。図面と提案書作成では5日で終わり、スケジュール感革命が起きた。これにより、図面を書いていた時間をデザイン検討に使えるという変革がもたらされた」と語った。
BIMの2次利用としては、福井コンピュータアーキテクトのプレゼンツール「リアルウォーカー」が既にあり、BIMモデルをベースにアニメーションを作って、ゲームのコントローラーで構造モデルの中を体感することも行った。さまざまな視点から構造モデルを確認することで、3Dモデルの入力チェックや構造の課題を早期に把握することができたという。
「この時代は、構造計算結果をベースに設計の中で構造モデルを作るところで終わっていた。しかし、BIMはこれから当たり前になるが、BIMを設計・施工一貫でフルで活用できるようになるまでの理想形には、相応の時間がかかることが想定された。そこでBIMだけを追求するのでなく、他の技術と連携させることで解決することを目指し、この機に“ICT推進課”へと舵を切った」(内田氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.