これからの生産性向上を考えた時に、必須となるのが国が主導している「Society5.0」。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題の両立させるという新たな概念だ。建設業のi-Constructionも、Society5.0の一環として、2025年度までに2割の生産性向上を掲げる。
仮想と現実の融合は、建設業に置き換えると、ドローンやGNSSを使った測量、3次元モデルによる可視化と手戻り防止を可能にする設計段階でのBIM/CIM、施工段階ではICT施工や3次元データ活用による新技術活用で労働力主体からの脱却などが挙げられる。維持管理でも人が実際に現場に足を運ばなくても、ドローン撮影した画像をAI解析にかけたり、車載データを使うなどで作業の効率化が図れる。
これらのヴァーチャル化を社会に実装していく上で、国交省では基盤となるデータの3次元化を進めている。
2018年度からは、新技術の導入にあたり、IT企業に建設現場へ入ってもらい、どういった生産性向上や安全対策、品質確保が可能なのか、提案を受け付ける「革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」がスタートした。技術公募では、生産性向上と省人化に向けた技術と、監督検査の自動化技術を求めている。
採択されたモデルプロジェクトの一例としては、画像とセンサーデータを組み合わせ、AIで解析することで、導線計画や作業者・建機の状況を把握。施工計画の改善など、効率的なマネジメントにつながる技術が示された。もう一つが、ウェアタイプのバイタルセンサーを使い、体温や気温、湿度などのデータを取得して、作業者の健康管理・作業ストレスのシチュエーションを特定して安全対策や作業効率の向上に生かせる新技術も紹介された。
BIM/CIMについては、さまざまなデータをつなげて有効活用することを目的にした“エンジン”という位置付け。2012年から橋梁(きょうりょう)・ダムなどインフラ分野で導入を進め、これまで土木分野で418件の業務・工事で試行した。2018年度は大規模構造物の詳細設計で活用することを前提とした「新技術導入促進調査経費」などを追い風に、200件の実施を目指す。
英国では先行して運用されているが、発注者に対する“BIM/CIM発注者研修フレームワーク”を2018年度から国交省でも開始。「新しい技術には触れたくないという発注者は多いが、使いこなせるような学習機会の場を提供する。受注者に対しても、ガイドラインや基準を理解してもらい、相互運用を図るためにも両者が同じ情報を同じように使える環境を整えていくことは大切だ」(那須氏)。
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