生産性向上という観点で言えば、例えばトンネルのシールド工事(NATM)は飛躍的に進化し、東海道新幹線の工事時代に「矢板工法」で掘っていたときは1m(メートル)で58人日以上かかっていたが、シールド化することで生産性10倍の6人日/mと大幅な省人化および工期短縮を実現。しかし、まだ国交省の発注の中でも7%しかなく、大部分を占める機械土工・舗装(22%)、現場打ちコンクリ(16%)は全技能労働者の4割に上り、まだまだ生産性を向上させる余地が残っている。
那須氏は「かつて進めていた施策では、人を使って現場で作業するのに変わりがなく、生産性向上につながっていないのではという課題があった。この解決のために国交省では、“i-Construction”を標ぼうし、2016年から本格的に取り組んできた。建設業界の高齢者が辞めていく一方で、若手が入職してこない問題に、ICTの活用で省人化を図ることを目指している。また、4週4休が当たり前になっている構造を変え、4週8休を確保できる現場にして、若年層が入ってきやすい環境を整えることも必要だ」とした。
建設現場で生産性が向上しない理由は、その場で作って他に転用できない「一品受注生産」、地理的要因や環境変化に現場で対応しなければいけない「現地屋外生産」、現地に赴いて作業しなければならないという「労働集約型生産」などの宿命的な問題点がある。このため、「製造業のライン生産やセル生産、自動ロボット化などのICT技術は、建設に導入するのが難しいという固定観念がある。これを打破し、i-Constructionにより“建設現場を最先端の工場へ”と変えていく」(那須氏)。
i-Constructionは、これまでよりも少ない人数、少ない工事日数で同じ工事量の実施を実現させ、業界全体の生産性向上を目標としている。2016年をi-Construction元年とし、MCバックホウ、ドローン(UAV)、出来形管理、点群観測などのICT土工を開始。2017には、舗装工などにも工種を拡大し、さらにCIM(Construction Information Modeling)を導入した。2018年は“深化”の年と見なし、維持管理段階でのロボット(ドローン)点検適用やクラウド環境の構築、BIM/CIM推進を現在進めている。
実際の活用例では、土工によるICT活用で2017年度は1952件を発注し、815件の工事で提案を受けた。2016年度は1625件に対して、584件だったことから、3割から4割まで増えている。実際の効果は274件の工事のうち31.2%で、省人化・工期短縮につながったという報告があった。
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