米国に本社置くKinestral Technologiesは、IoT調光ガラスを発表した。Kinestralの技術にいち早く目を付け、2012年からパートナーシップを築いてきたのがガラス世界最大手の旭硝子(AGC)である。「5年間全てのステップを一緒に歩んだ」という両社は、量産化に向けて次の舵を切った。
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「Halio(ヘイリオ)」は、まるで魔法のような製品――Kinestral Technologies(キネストラル テクノロジー、以下Kinestral)のCEOであるS.B. Cha氏はこう語る。同社はIoT調光ガラスHalioを2016年12月に発表した。Halioは従来の調光ガラスと違い、透明からダークグレイまで色の表現が豊かで、その変わる時間が速いのが特長だ。
Kinestralの技術にいち早く目を付け、2012年からパートナーシップを築いてきたのがガラス世界最大手の旭硝子(AGC)である。Cha氏が「5年間全てのステップを一緒に歩んできた」と語るほど信頼関係が強い両社は、量産化に向けて次の舵を切った。
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の子会社で、ディスプレイ技術などを手掛けるGTOC(G-Tech Optoelectronics Corporation)とパートナーシップを締結。GTOC敷地内にある工場跡地を活用して、Halio専用の製造工場を建設する。工場建設費は旭硝子とGTOCが共同で出資した。2018年半ばから生産が本格化される予定だ。
Cha氏と旭硝子ビルディング・産業ガラスカンパニー 戦略・企画室の副社長兼スマートプロジェクトリーダーの工藤雅司氏にインタビューを行った。
Halioは透明からライトグレー、ダークグレーまで色のトーンを電気で調整できる。透明状態では、一般的な窓ガラスに近い70%以上の透過率を実現。透明からダークグレーの変化までに要する時間は約3分という。ダークグレーでは紫外線を100%カット、光も99.9%遮るためプライバシーの保護に有効だ。色の変更に電力を使用するが、その維持に電力を必要とせず、停電したとしても色は変わらない。
またIoT調光ガラスと呼ぶように、Halioに搭載されているドライバーからゲートウェイを経由し、Kinestralが開発したクラウドと接続することで「より快適な環境を自動的に提供する」(Cha氏)。
サードパーティー製のIoTデバイスとの連携が容易としており、音声やスマートフォンによる操作をはじめ、温度や気候、時間に合わせて光を自動的に調整できる。例えば寝室にHalioを設置し、起きる時間に自然光が入るよう調整するなどの活用方法が考えられる。オフィスにおいても、パーテーションやブラインドの代わりに活用可能だ。
このように光の調整で部屋の温度を快適に保つことは、冷暖房を必要とする時間を減らすため、省エネにつながるとCha氏は指摘する。政府が普及促進を目指す「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」実現に有効な手段となるかもしれない。
IoTプロダクトはセキュリティが問題視されるが、Cha氏は「銀行レベルのセキュリティ対策を行っているため、他のシステムとシームレスに統合可能」とする。
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