交通事故の兆候を見逃さない「生成AIの目」 NTTがインフラ監視の検知距離を3倍に:スマートメンテナンス(1/2 ページ)

NTTは、AIの画像解析を用いた道路監視などで、4K映像を縮小せずに検知可能距離を従来比3倍以上に拡大する映像監視技術を開発した。独自の「超高精細映像AI推論LSI」で状況判断に必要な情報だけを生成AI技術の視覚言語モデル「VLM」へ渡し、遠方の小さな対象も見落とさない高精度かつ省電力なインフラ監視が実現する。

» 2026年10月28日 20時36分 公開
[石原忍,BUILT]

 NTTは2026年10月27日、自社開発の「超高精細映像AI推論LSI(Large Scale Integration)」を活用し、4K映像を縮小せずに高精細なままリアルタイムで解析する新たな映像監視技術を実証したと発表した。

 発表日前日には説明会を開催し、インフラ監視用途での技術的な有用性を解説した。新技術は、遠方に小さく映る対象の検知可能距離を従来比で3倍以上に拡大し、検知した対象の状況判断までを支援する。道路や空港といったインフラ監視で、少ないカメラで広範囲を網羅する「広域化/省設備化」に貢献する。

LSIは「現場で何が起きているか」を推論するVLMへ「視線を誘導」

 現在のインフラ監視では、限られた人員と設備で事故や落下物といった重要事象を広範囲から自動で検出するニーズが高まっている。そのため、単なる物体認識にとどまらず、映像をもとに対象の状態や周囲との関係から、「何が起きているか」を状況的に推論できる生成AIの視覚言語モデル「VLM」の活用が期待されている。

 しかし、一般的なVLMや前処理を行う従来の物体検出器は、解像度に制約があり、4Kなどの高解像度映像を入力する際には512×512ピクセル程度に縮小しなければならなかった。映像を縮小すると、その過程で遠方の小さな対象が潰れて特徴が失われてしまい、異状を見逃してしまう致命的な問題があった。

 NTTが開発した新技術は、エッジデバイスに搭載可能な超高精細の映像AI推論LSIが、4K映像を圧縮することなく、30FPS(秒間30フレーム)でリアルタイムに解析。遠方の小さな対象であっても高精細なまま捉え、従来比で検知可能な距離を3倍以上に拡大できる。また、検出した物体を追跡し、位置や速度、移動方向といった「動きの情報」を推定する機能も備える。

「超高精細映像AI推論LSI」のスケーリング概要(図左)。フレーム間の相関を利用した演算効率化などで、検出精度を確保しつつ、GPUによる演算量を削減し、低電力での4Kリアルタイム解析を可能にした(図右) 「超高精細映像AI推論LSI」のスケーリング概要(図左)。フレーム間の相関を利用した演算効率化などで、検出精度を確保しつつ、GPUによる演算量を削減し、低電力での4Kリアルタイム解析を可能にした(図右) 提供:NTT

 本技術では、LSIをVLMで検知する前段階の処理エンジンとして活用する。4K映像からVLMが見るべき対象を高精細に捉え、状況判断のために必要となる対象周辺を4Kの解像度を保ったまま局所的に切り出した「高精細画像」と、「動きの情報(速度や移動方向、周辺車両数、周辺車両の速度など)」を生成してセットのデータとしてVLMへ渡す。VLMは、切り出し画像から形状や周囲との関係などの細部を確認するとともに、画像だけでは分からない時間的な変化を動きの情報で補完し、道路上に停まっている車であれば「事故か一時停止か」などを正確に判断する。

超高精細映像AI推論LSIを前段処理に活用したVLM連携道路監視PoCシステム。「高精細画像」と「動きの情報」をVLMへ渡す 超高精細映像AI推論LSIを前段処理に活用したVLM連携道路監視PoCシステム。「高精細画像」と「動きの情報」をVLMへ渡す 提供:NTT
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