研究施設などに納入する特殊扉は、操作方法について教育を受けた職員など、特定の人が使うことを想定している。一方、シェルターには子どもや高齢者まで年齢や性別を問わず幅広い人が避難し、混乱した状況で初めて扉に触れる可能性がある。BOUNCEBACKでは防護性能だけでなく、避難者が簡単かつ安全に開閉し、確実に密閉できることを重視した。
開閉バーは指を挟みにくい一体型設計とし、扉が回転するヒンジ部分には手や指の挟み込みを防ぐ吊元安全カバーを設けた。扉の下と床の隙間も最小限に抑えて靴先やつま先の巻き込みを防ぐ。
ハンドルは、がれきが引っ掛かって操作できなくなるリスクを低減するため、穴やスポークのないフラットな形状を採用した。扉が開いている間はハンドルを操作できないロック機構も備え、誤操作を防ぐ。
重量のある扉を少ない力で動かすには、ヒンジの性能だけでなく、据え付け時の精度も重要になる。扉を取り付ける際にわずかに傾くだけでも摩擦が生じ、開けにくくなるためだ。イトーキは扉と枠を高い精度で据え付け、摩擦を極力減らすことでスムーズな開閉を実現している。
気密性や水密性を確保するには、閉めた扉を枠に密着させる必要がある。BOUNCEBACKでは、ハンドルを回すと扉が枠へ引き寄せられ、高い気密性や水密性を確保する「2WAYヒンジ」を採用した。また、ハンドルを回し始めてから締め切るまで、操作に必要な力が大きく変わらないように配慮している。
イトーキはシェルター関連を今後の注力分野の1つに位置付け、2026年1月に専門の営業組織「シェルター販売室」を立ち上げた。既に公的施設向けに1件を受注し、設計を進めている。
自治体に加え、ビルや商業施設の地下にシェルターを設ける民間企業などへの提案も想定する。また、入口ががれきなどで開かなくなった場合に備える緊急脱出口向けの扉も手掛けており、会場ではパネルで紹介した。設置の必要性は、シェルターの出入口数などによって異なるという。
イトーキ 設備機器事業本部 設備機器商品統括部 技術総監の河西勉氏は、開発で最も重視したのは避難者の安全性だと説明する。「シェルターには女性や子ども、高齢者など、さまざまな人が避難してくる。慣れない空間で、初めて触る扉によってけがをするようなことがあってはいけない。これまで特殊扉で培ってきた性能に加え、誰もが安全に使えることを考えた」。人が使ったときの安全性や心地よさを考える姿勢は、オフィス家具なども手掛けるイトーキの企業文化として根付いているという。
河西氏は、日本ではシェルターがまだ十分に浸透していないとした上で、「自然災害への備えという意味でも、もっと身近な存在になっていくべきだ。シェルターの必要性を自分のこととして捉えてほしい」と語った。
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