安藤ハザマは、建設事業で培ってきた地下空間構築やトンネル建設の技術を応用して月に安全/安心な空間の構築を目指す新技術開発構想「宇宙シェルター」と「ルナ・ジオフロント」を発表した。
安藤ハザマは2025年6月3日、月面での新たな技術開発構想「宇宙シェルター」と「ルナ・ジオフロント」を発表した。これまで建設事業で培ってきた地下空間構築やトンネル建設の技術を応用し、月面や月の地下に安全/安心な空間の構築を目指す。
安藤ハザマは2024年10月に「宇宙技術未来創造室」を設立、宇宙開発分野での技術開発と事業拡大を視野に入れた活動を開始した。
月面には地上の100倍以上の放射線が降り注ぐため、人や機材を放射線から保護する空間の整備と、正確な被ばく安全評価が不可欠となる。宇宙シェルター構想では、月面に存在する岩石由来の粒子や細かな破片「レゴリス」を遮蔽材料として使用した月面放射線防護装置の検討を進める。恒常的な銀河宇宙線(太陽系外からの荷電粒子)と、突発的な太陽フレアによる高エネルギー粒子/電磁波の双方への対応を想定している。
今回の取り組みでは、用途ごとの目標遮蔽性能を定義し、必要な遮蔽材料構成/厚さの設計による構造材と施工法の開発を行う。また、銀河宇宙線と太陽フレアが人や機器に与える影響を評価し、避難アラートを発報する仕組みを構築する。月面で活動するための仮設作業所や休憩所、一次避難所としての利用を想定し、2030年代での実現を目標に掲げる。
一方、月には地下空間(溶岩洞)が確認されており、将来、活動拠点として利用できる可能性がある。このため、空間構築技術の確立が求められている。ルナ・ジオフロント構想では、月地下空間に構造物を建設し、「人が働く空間」「住む空間」「重要設備を保護する空間」としての活用を検討する。
具体的には、溶岩洞の空間の広さや形状を探索するロボットや空洞の安定性を評価する技術の開発を進める。さらに、探索結果と安定性評価結果に基づいて空間の掘削/補強を行い、居住や研究、生産活動に適した空間を施工する技術も検討。2040年代の実現を目指している。
近年、NASAの「アルテミス計画」や、JAXAの「Moon to Mars Innovation」推進などを背景に、宇宙関連ビジネスへの関心が高まっている。安藤ハザマは今後、産学官の連携を強化し、共同研究などを通じて構想の具体化を進めていく方針だ。
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