BIM活用は積算から鉄骨製作モデルへ 帝国不動産、社外連携への挑戦:不動産デベロッパーのBIM導入事例(1/3 ページ)

顧客提案でのBIM運用率はほぼ100%、積算の最適化も実現――。BIM活用について社内で成果を上げた帝国不動産が次に挑むのは、「社外連携」だ。鉄骨加工会社とともに鉄骨製作モデルの実現を目指している。帝国不動産のBIM活用の次の一手を追う。

» 2026年09月29日 18時16分 公開
[黒岩裕子,BUILT]

 建設業界ではBIMの導入が進みつつあり、先行企業ではその用途が設計にとどまらず、積算や施工を含む幅広い実務へと広がっている。一方、BIMによって建設生産プロセス全体の業務をさらに効率化するには、自社内の運用だけでなく、意匠設計事務所や建材加工会社などの協力事業者との連携が欠かせない。社内での定着に続き、社外との連携が次の課題となる。

 賃貸集合住宅の開発から設計・施工、管理までを一貫して手掛ける帝国不動産も、BIM活用を新たな段階へ進めようとしている。社内では、顧客への提案図面を作成するプランニング段階でのBIM運用率がほぼ100%に到達。実施設計や積算にも活用範囲を広げ、発注量の適正化などでも成果が表れ始めた。しかし、協力事業者とのBIM連携には課題があった。

 これまでも協力関係にある意匠設計事務所のBIM導入を支援するなど、社外との連携を模索してきたが、現在注力しているのが、鉄骨加工会社と進める「鉄骨製作モデル」の構築だ。構造図の作成に用いるBIMモデルに鉄骨加工で必要な情報を追加し、加工図作成の省力化とコスト削減につなげようとしている。こうした取り組みには、国土交通省のBIM関連補助事業を活用している。

 社内で培ったBIM活用を、どのように社外との業務へ広げているのか。用途に応じてBIMモデルを使い分ける工夫や鉄骨製作モデルの検証、計59棟で利用した補助事業の実務から、BIM活用の現状と課題を探る。

提案と実施設計、積算でモデルを分ける

 帝国不動産のBIM運用は、プランモデル、実施モデル、積算モデルの3段階に分かれる。まず営業部門から依頼を受けたプランニング課が、顧客への提案資料やパースに使うプランモデルを作成。契約後は設計システム課が実施モデルを作り、実施設計や確認申請に活用する。さらに、実施モデルへ積算に必要な情報を加え、積算モデルに発展させる。

 帝国不動産が手掛ける賃貸集合住宅は企画商品が中心で、複数の物件で同じ部材を使用する。この特徴を生かし、複数の担当者が同じ品質で効率よくモデルを作成できるように、商品に対応した共通のテンプレートやオブジェクトを整備している。1つのプロジェクトでモデル作成から積算までに関わる担当者はおおむね4〜5人。各担当者が共通のルールに沿ってモデルを作成している。敷地条件が異なる場合は、オブジェクトを一から作り直すのではなく、形状や寸法を調整して対応している。

実施モデルの事例 提供:帝国不動産

 3つのモデルに分けるのは、業務ごとに求められる情報の細かさが異なるためだ。

 例えば、実施設計に用いる実施モデルの段階では、床と壁の境目に取り付ける巾木(はばき)などの細かな仕上げ材を表現する必要がない。一方、積算や発注では巾木の数量や長さに加え、入隅(いりずみ)や出隅(でずみ)に取り付けるキャップの個数まで把握しなければならない。詳細なパーツの情報まで初めから実施モデルへ盛り込んでしまうと、モデル作成の手間が増え、データ容量も大きくなる。帝国不動産では、実施モデルを基に、巾木やキャップなど積算に必要なパーツの情報を加えた積算モデルを別途作成する。

積算モデルの事例 提供:帝国不動産
建築本部 商品開発部 設計システム課 係長 中村ちえみ氏 提供:帝国不動産

 建築本部 商品開発部 設計システム課 係長 中村ちえみ氏は「業務ごとに必要な情報を整理し、実施設計では不要な情報を積算段階で追加することで、モデルを過度に複雑にせず、積算や発注に必要な数量を算出できるようにした」と説明する。

 積算モデルには、拾い出した建材の数量と、その算出根拠を後から確認できる仕組みも設けた。例えば、壁紙を張る面ごとに番号を割り当て、どの部屋のどの位置から拾った数量なのかを照合できるようにしている。また、施工担当者にヒアリングして「キッチンの裏側には壁紙を張らない」といった意見を収集し、実際の施工範囲に即して正確に数量を算出できるようにした。

 積算精度の向上は工事費にも反映されている。帝国不動産が試算した2物件では、BIMで算出した工事費の積算額が、従来手法と比べてそれぞれ1.26%、1.71%減少した。帝国不動産は年間100棟以上を手掛けており、1棟ごとの差はわずかでも、積み重なれば工事費全体への影響は無視できない額になる。

建材に番号を割り当て照合できる仕組みとした 提供:帝国不動産
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