BIM積算の成果の1つが、床材の拾い出し精度の向上だ。帝国不動産は、2024年7月から2025年3月までにBIMで床材を割り付けた計54棟で、発注量は従来の手拾いと比べて286坪削減し、合計6887坪に収まった。
従来は紙図面に床材の配置を手描きし、数量を拾い出す作業に1世帯当たり約1時間を要していた。BIM上で床材を正確に割り付けることで作業時間の短縮とともに、経験則に基づく発注量の上乗せを抑え、余剰材や産業廃棄物の削減につなげた。
現状では、全項目に対応しているわけではなく、基礎工事など現時点では対応できない部分も残る。
建築本部 本部長 佐藤紀一氏は「省エネルギー性能や構造種別が変われば、使用する建材なども変わる。全ての自社商品の設計や積算をBIM化できているわけではなく、意匠分野での整備を先行させながら、構造や設備にも活用範囲を広げている段階だ。取り組みに終わりはない」と語る。
BIMモデルを細部まで作り込む過程は、積算の効率化だけでなく、若手社員の育成にもつながっている。設計システム課でモデル作成を担当する新入社員は、建物を構成する部材や納まり、仕様を1つずつ確認する。入社から半年〜1年ほどで、他部署の同期よりも自社商品に詳しくなる傾向があるという。
帝国不動産が社内の次に目を向けるのが、設計〜製造のBIM連携だ。鉄骨ファブリケータ―と共同で、鉄骨加工工場での部材製作にBIMデータを利用する鉄骨製作モデルの標準化に取り組んでいる。
まず、構造計算ソフトのデータをBIMソフトに取り込み、柱や梁(はり)などを3Dモデル化する。部材の納まりなどを調整し、構造BIMモデルに仕上げる。
ただし、構造BIMモデルをそのまま鉄骨の製作に使うことはできない。鉄骨加工工場が使用する加工図には、ガセットプレートやアンカー、取り付け穴などの形状や寸法、位置といった、構造図には表れない詳細な情報が必要になるためだ。そこで、モデルに鉄骨製作で必要となる部材や詳細情報を加え、鉄骨加工工場で利用できるレベルまで作り込む「鉄骨製作モデル」の構築に着手した。
建築本部 建築部/商品開発部 部長 布川隆司氏は「構造計算ソフトのデータから構造BIMモデルを作成する中で、鉄骨の加工図までBIMで作れるのではないかと考えた。鉄骨加工会社が担っている作図を省力化できれば、工数の削減、ひいてはコスト削減につながる」と語る。
帝国不動産は鉄骨加工業者から、普段使用しているガセットプレートなどの種類や仕様に関する情報を受け取りBIMモデル上に再現した。当初は数千種類の部材をモデル化する必要があると想定していたが、実際に日常的に使われているのは数十〜数百種類程度で、それらを組み合わせていることが分かった。
現在は、帝国不動産が作成した鉄骨製作モデルと、鉄骨加工会社が従来の方法で作成した加工図を照合し、穴の位置や取り付けプレートの高さなどを比較して、鉄骨製作に必要な情報をモデル上で正しく表現できるかを検証している段階だ。
モデルの精度は徐々に高まっているものの、加工図作成を代替できる段階には至っていないという。従来の加工図との差異を確認し、モデルに不足している情報や修正が必要な箇所を洗い出している。
鉄骨加工会社との連携を可能にした背景には、長年にわたる取引関係がある。帝国不動産は案件ごとに発注先を変えるのではなく、同じ事業者へ継続的に鉄骨加工を依頼してきた。使用する部材や製作方法について情報を共有しやすく、モデル化に必要な協力も得やすかったという。
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