政府の「人工知能基本計画」策定を受け、海外に後れをとるAI分野で反転攻勢の機運が高まっています。日本の建設業界でも、既に膨大な学習データを保有しているインフラの維持管理などで、フィジカルAIの適用が進んでいます。土木分野でAI活用の「勝ち筋」とはどのような形があるのか、最新論文を引用しながら探ります。
AIの発展は社会を大きく変えつつあります。蒸気機関の登場による産業革命にもなぞらえることのできる“歴史的変革”が訪れつつあります。政府では、令和7(2025)年12月に「人工知能基本計画」※1を閣議決定しました。
計画では、日本は大規模なAIの基盤モデルの投資規模では出遅れたものの、業界や業務に特化したアプリなどの具体的な付加価値の創出が重要となりつつあることから、広範な産業基盤を生かして反転攻勢に出て、「勝ち筋」を見つける好機と位置付けています。そして、「AIイノベーション」を推進し、「世界で最もAIを開発かつ活用しやすい国」を実現していく方針です。
それでは、土木分野でAI活用の「勝ち筋」はどのようなところにあるのでしょうか。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
インフラマネジメントや災害対応では、本連載でも取り上げたように、既に多くのAI活用が研究開発されています。現実の空間を理解し、判断して、行動につなげる「フィジカルAI」についても、現場と一体化したAI開発や利活用が進んでいます。下図は点検画像に技術的に関連する情報を加えることで、所見を生成するAIの例です※2。
近い将来、ドローンや建機運転はフィジカルAIによる自律化が視野に入るとみられています※3。
一方、土木の現場では、人間がその場その場で判断して手を入れなければならない機械化が困難な作業が多く存在しています。ヒューマノイドなどの先進的なロボットが完全に代替できるようになるには、まだまだ時間がかかると思われますので、フィジカルAIによる人間の作業の支援や現場の安全性の向上が主要なターゲットになるのではないでしょうか。下図は、撮影した画像から損傷状況をリアルタイムで検出して、災害時の調査を支援するAIシステムの例です※4。
センシング情報を利用した現場の問題解決や生産性向上も重要です※5、6。下図は、点群データを活用することで配筋検査の業務フロー自体を見直し、生産性を高める構想です。
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