名神高速の床版取替で、鹿島がUFC床版と外ケーブル補強を初適用スマートコンストラクション

鹿島建設は、名神高速道路の床版取替工事で、超高強度の「UFC道路橋床版」と「外ケーブル補強工法」を組み合わせた国内初の工法を採用した。軽量な床版と革新的な鋼桁補強により、上部工の重量増加を最小限に抑え、耐震性の向上と工期短縮を両立した。

» 2026年04月08日 12時00分 公開
[石原忍BUILT]

 鹿島建設は2026年4月6日、名神高速道路の矢倉川橋(滋賀県彦根市)における床版取替工事で、超高強度繊維補強コンクリートを使用した「UFC道路橋床版」と、鋼桁を補強する「外ケーブル補強工法」を組み合わせた国内初の施工を実施したと発表した。軽量な新素材と効率的な補強手法の相乗効果で、橋梁の耐震性を大幅に高めつつ、厳しい車線規制を伴う工事の期間短縮を実現した注目のプロジェクトだ。

老朽化橋梁のネックとなる「重量増加」の課題

UFC道路橋床版の架設 UFC道路橋床版の架設 出典:鹿島建設プレスリリース

 高度経済成長期に建設された高速道路橋は現在、大規模な更新期を迎えている。経年劣化した既存の鉄筋コンクリート(RC)床版を、現行の厳しい設計基準を満たすプレストレストコンクリート(PC)床版に取り替えるのが一般的だ。しかし、PC床版はRC床版よりも厚みが増して重くなるため、橋を支える鋼桁の補強や橋脚の耐震補強が追加で必要になるケースが多い。

 従来の鋼桁補強では、鋼板の厚みを増したり補強部材を追加したりする手法が採られてきた。ただ、これらの方法は橋全体の重量がさらに大きくなるだけでなく、工費の増加を招きやすい。何より、交通を制限する車線規制期間中に補強材の固定などの煩雑な作業が発生し、多くの時間と労力を要することが現場の大きな課題となっていた。

 こうした課題を解決するため、鹿島建設が阪神高速道路と共同開発したのが「UFC道路橋床版」だ。これは、圧縮強度が150N/mm2以上と極めて高い超高強度繊維補強コンクリート「サクセム」を用いたプレキャスト床版に、橋軸とその直角の2方向から高いプレストレス(あらかじめ与える圧縮力)を導入したものだ。

 従来のPC床版に比べて圧倒的に薄肉で軽量ながら、高い疲労耐久性を誇る。重量が軽いため、橋脚や基礎にかかる負荷を減らし、耐震性の向上に直結する。鹿島建設は2018年の初適用以来、すでに5橋の工事で実績を重ねてきた。

外ケーブル補強の状況 外ケーブル補強の状況 出典:鹿島建設プレスリリース

 今回の矢倉川橋の工事(橋長29.1メートル、床版44枚)では、この軽量なUFC床版の長所をさらに引き出すため、国内で初めて「外ケーブル補強工法」を鋼桁の補強に採用した。主にコンクリート橋の補強で使われる技術で、今回は鋼桁の下部スペースにケーブルを配置し、定着部などを介してケーブルをピンと引っ張り、橋桁の上からかかる荷重に対する耐力を一気に向上させた。

鋼桁に外ケーブルを配置した状況 鋼桁に外ケーブルを配置した状況 出典:鹿島建設プレスリリース

工期短縮と耐震性の大幅アップを実現

 UFC道路橋床版と外ケーブル補強工法を組み合わせた効果は絶大だ。まず、鋼桁のフランジ増し厚や補強材の追加が不要になったことで、上部工全体の重量増加を最小限に抑えることに成功した。床版自体の軽量化と相まって、取替前と比べても道路橋の耐震性が飛躍的に向上している。

 また、施工管理の面でも大きなメリットを生んだ。外ケーブルを緊張する作業は、本格的な床版取替工事が始まる前に済ませることができる。これにより、時間との勝負になる車線規制期間中(床版取替期間中)に補強作業を行う必要がなくなり、従来の鋼桁補強で要した時間と労力を大幅に削減した。

 インフラの老朽化対策が急務となる中、工事による交通渋滞の最小化と安全性の確保は社会的な要請だ。鹿島建設は今後、今回の矢倉川橋での工事で得られた知見を生かし、UFC道路橋床版を使った大規模リニューアル工事への導入をさらに拡大していく構えだ。

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