日立建機はハードウェアの進化だけでなく、デジタル技術を用いた「運営の最適化」による脱炭素化をもう1つの柱に据えている。その中核となるのが、自社開発のデジタルソリューション「LANDCROS(ランドクロス) Connect Insight」だ。2027年4月1日から日立建機の商号を「ランドクロス」に変更することに合わせ、さまざまな製品ブランドもLANDCROSに統一することを意識した名称だ。
従来は1日1回だった稼働データの取得を「ほぼリアルタイム」の収集に切り替え、バッテリーや電力の詳細データを活用した高度なAI分析に基づき、戦略的なエネルギーマネジメントを可能にする。
具体的な使い方としては、走行ルートや車両別の燃費を「見える化」し、運行の改善を提案する。配車も最適化し、運搬量を維持したまま燃料消費を抑える。さらに、鉱山サイト全体の最適台数を算出し、トータルで環境負荷を低減する。
また、日立建機は2025年12月に、AIを活用した鉱山機械のアセットヘルス管理と稼働データ分析に強みを持つカナダの「Rithmik Solutions(リズミック ソリューションズ)」に300万米ドル(約4億2600万円)を出資した。両社の技術を統合し、安全性向上、コスト低減、環境負荷の低減など、「複雑化する鉱山運営」のパズルをAIで解き明かすのが狙いだ。
両社協業の成果の一つが「異常感知」だ。これまでの異常検知は共通の基準値をベースにしていたが、新技術では車体ごとの健全状態をAIが学習し、各車に最適化した基準を基に現在の状態を判定する。複数のデータを組み合わせることで高い精度での車体状態の診断が可能になり、わずかなパフォーマンス低下や燃費悪化の要因特定も可能になる。
ただ、このようなソフトウェア開発には多大な人的リソースが必要となる。そのため、外に開かれたオープンな環境とし、外部の専門知見を積極的に取り入れつつ開発スピードを維持している。
日立建機のマイニング事業が目指す全体像は、「Zero Emission(脱炭素)」「Zero Entry(無人化)」「Zero Downtime(止まらない)」の“3つのゼロ”に集約される。
Zero Entryでは、現在の長距離遠隔操作や部分自動化(Phase 2)から、将来の掘削積込オペレーションの完全自動化(Phase 4)までのロードマップを描く。実現に向け、資源大手「Rio Tinto(リオ ティント)」の技術開発を担う子会社「Technological Resources(テクノロジカル リソースズ)」と共同開発を進め、半自動や遠隔操作を実現した。次のステップとなる自律運転や自動掘削には、LiDARや超音波センサーを用いた「周囲感知技術」が鍵となり、社会実装を見据えた開発が進行中だ。
ビジネス面では、マイニング事業で2024年度の売上見込み約4100億円に対し、2030年度には6000億円以上という野心的な目標を掲げる。成長を支えるのが、これまでシェアが低かった南北を含む米州市場の開拓だ。今後は中南米などでの販売網強化に加え、M&Aで傘下に収めたWenco、Bradken、H-E Partsを通じ、新車販売だけでなく部品やサービスなどの安定した収益源を拡大する計画だ。
今回のミーティングでは、フル電動化に伴う収益構造の変化について興味深い見解も提示された。
フル電動化が進むと、エンジンのオーバーホール件数が減少する。エンジンオイルや冷却水などの交換も不要となり、結果的にアフターサービスの割合が減るという懸念がある。しかし、日立建機では「エンジンは他社からの購入品であり、インパクトは限定的」とみる。
バッテリーについては、日立建機 執行役 マイニングビジネスユニット 副ビジネスユニット長の兼澤寛氏が、「顧客にとってバッテリーのコストは負担となっている」と指摘。そのため、高価なバッテリーを車体と切り離してリースで提供したり、寿命を迎えたバッテリーを鉱山内の蓄電設備として再利用したりと、新たな収益モデルを模索している。
環境やコストに対するアプローチが多様化する中で、日立建機はバッテリーによるフル電動式とディーゼルハイブリッド式に照準を当てる。ベースとなるのは、日立製作所と共同開発した「ACドライブシステム」だ。ACドライブシステムは、ディーゼルエンジンで発電し、その電力でモーターを駆動する。高出力と、きめの細かな制御が可能で、メンテナンスに手間も掛からない。日立建機はACドライブシステムを武器に、露天掘りから坑内掘り領域へのタッチポイント拡大も見据えている。
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