新菱冷熱工業と米Autodeskは、戦略的連携に関する覚書(MOU2.0)を締結した。MOU2.0では、各事業部や支社にBIMコーディネーター配置も含む「新菱BIM」の定着、建設サプライチェーンとも連携するデータ主導のワークフロー、AI活用も見据えたデジタル基盤整備の3つの施策で、施工現場の情報を活用したデータ駆動型の企業運営を目指す。
新菱冷熱工業と米Autodeskは2025年12月11日、DX推進と企業変革の加速を目的に、戦略的連携に関する覚書(MOU2.0)を締結したと発表した。MOU 2.0では、2024年3月に結んだMOU1.0で得られた成果を土台に、BIMのさらなる導入や定着、将来のAI活用を視野に入れたDX基盤の整備を推進する。
新菱冷熱は、2030年の長期ビジョン「未来・環境エンジニアリングカンパニー」の実現に向け、施工プロセスの高度化、データ活用による意思決定支援、脱炭素社会への貢献を進めており、MOU 2.0はその実現を加速させる重要なステップと位置付ける。
両社はMOU1.0締結以降、複数のプロジェクトでBIM環境の整備と施工DXの実装を進めてきた。新菱冷熱はデジタル推進企画部のBIM課と各事業部が連携し、施工現場の実情に即した対話を重ね、実効性の高い成果を得られるワークフローを新たに構築した。
新菱冷熱 代表取締役副社長 デジタルトランスフォーメーション推進本部長の焼田克彦氏は、「MOU1.0で始めた取り組みを継続するだけでなく、MOU2.0では新たなワークフローを施工現場にも定着させ、成果につなげなければならない」と述べ、Autodeskとの長期的かつ戦略的な提携の重要性を強調した。
新菱冷熱工業 代表取締役副社長 デジタルトランスフォーメーション推進本部長 焼田克彦氏(左)、オートデスク 代表取締役社長/Autodesk Japan Sales Vice President 中西 智行氏(右) 出典:オートデスクプレスリリース具体的には、「新菱BIMの導入推進と定着化」「データドリブンなプロジェクト運営の仕組みづくり」「データ蓄積と活用に向けたデジタル基盤整備」の3つの施策を展開する。
新菱BIMは、Autodesk Construction Cloud(ACC)を「コア事業のデータプラットフォーム」として位置付け、「BIMを基本とした施工」「ACCによる現場の管理/運営」「ACCとRevitで施工DXを実現」を柱としたBIM活用だ。新菱BIMを導入する案件では、関係者へのBIM教育の他、各事業部や支社にはBIMコーディネーターを選任した専門教育を行う。
データドリブンな仕組みでは、配管やダクトの施工領域を中心にRevitとACCの機能を最大限活用。プレファブ(工場や倉庫での事前制作)やロジスティクス(資材の搬送/管理)との連携も視野に入れた“統合型ワークフロー”の整備を進める。統合型ワークフローでは、施工業者が必要とする図面を適切なタイミングで提供し、協力会社も含めた一気通貫のプロジェクト運営体制を構築し、設計から施工、維持管理までのプロセスをデータでつなぎ、生産性と品質の向上を図る。
デジタル基盤整備の核となるのが、「粒状化データ」の活用。BIMを企業全体の意思決定を支える「戦略的データ資産」と位置付け、Revitで生成したBIMデータを従来のファイル形式に依存せず、必要な情報を最小単位で抽出/活用できるデータ構造(粒状化)で管理する。モデルデータと外部システムとの柔軟な連携が可能となり、設計・施工・維持管理を横断するデータ活用が可能になる。
そのために新菱冷熱はBIMデータに加え、自社が保有する基盤システムの業務データやACCに蓄積されたプロジェクト情報を統合。AIも活用し、施工現場の状況把握だけでなく、プロジェクト分析や経営分析にまでの高度なデジタル基盤を構築する。
その先に、施工現場のリアルタイムな情報を経営層の意思決定に直結させる「データ駆動型の企業運営」が実現し、統合的なデータ活用を通じて建設DXの新たなスタンダードを創出する。
今後、両社は継続的な技術協働と戦略パートナーシップの深化により、BIM人材育成や施工DX推進、DX基盤の高度化、支援体制の強化、AI活用を見据えた取り組みなどを加速させ、設備業界全体の生産性向上と価値創造に貢献する。
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