大林組は、道路橋の床版取替工事における省人化を目的に「あと埋め作業」を不要とするプレキャストPC床版「SJKSLAB」を開発した。
大林組は2025年10月15日、道路橋リニューアル工事での床版取替工事の省人化を目的に、貫通孔や吊(つ)り孔のあと埋め作業を不要とするプレキャストPC床版「SJKSLAB(エスジェーケースラブ)」を開発したと発表した。
従来のプレキャストPC床版は橋の主桁と一体化させるため「ずれ止め構造」を採用し、スタッド孔や高さ調整孔、吊り孔がなど複数の孔を設ける必要があった。設置後は孔をモルタルで埋めるあと埋め作業が必要で、作業負担に加えて、埋め部からの水や塩化物イオンの侵入によるコンクリート劣化リスクも指摘されていた。さらに床版内の鉄筋やPC鋼材位置が標準化できず、設計/製作に手間がかかる点も課題だった。
新開発のSJKSLABは、短い頭付きスタッドと孔あき鋼板ジベルを組み合わせ、高強度モルタルで一体化する新しいずれ止め構造を採用。床版側面に特殊プレートを取り付けることで、従来必要だった貫通孔や吊り孔をなくした。これにより、あと埋め作業を行わずに施工できる構造を実現した。
従来構造と同等のずれ止め性能を維持しながら、スタッド孔と高さ調整孔の2種の貫通孔、吊り孔を設けないことで、床版に一様なプレストレスを導入可能。また、あと埋め部からの水や塩化物イオンの侵入リスクがないため、劣化リスクを低減し、長寿命化に貢献できる。あと埋め作業不要による省人化とコスト縮減も見込まれる。
大林組によると、橋長80メートル、幅員15メートルの床版取替工事では、約60人工の削減効果が見込まれ、コストも約2%の削減が期待できるという。
交通量の少ない夜間の車線規制のみで施工可能な床版取替工法「DAYFREE」や防水工を不要とする「スリムトップ」などの技術とSJKSLABを組み合わせることで、工事規制期間の短縮やより高品質で耐久性の向上した床版を提供できる。低炭素型のコンクリートを活用した「クリーンクリートPC床版」の適用も可能だ。
大林組は今後SJKSLABを積極的に提案し、床版取替工事でのプレキャストPC床版構造の標準化を図っていく。
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