世界初の“木造”人工衛星と阪神・淡路大震災級に耐える木造建築が「ウッドデザイン賞2024」奨励賞木造/木質化(1/2 ページ)

住友林業が手掛けた木造人工衛星「LignoSat」と、阪神・淡路大震災級の地震波にも耐える高い耐震性を証明した木造10階建て実寸大実験が「ウッドデザイン賞2024」奨励賞(審査委員長賞)を受賞した。

» 2025年01月21日 07時00分 公開
[BUILT]

 住友林業は、木造人工衛星「LignoSat」と10階建て木造実大振動台実験「NHERI TallWood Project(ナーリ トールウッド プロジェクト)」の住友林業検証フェーズの2件で、「ウッドデザイン賞2024」上位賞の奨励賞(審査委員長賞)を受賞した。

北海道紋別のホオノキ材を使用した世界初の木造人工衛星

木造人工衛星「LignoSat」の受賞者 木造人工衛星「LignoSat」の受賞者 出典:住友林業プレスリリース

 木造人工衛星のLignoSat(リグノサット)は京都大学と住友林業が約4年かけて開発した1辺が100ミリ角のキューブサットと呼ばれる木造小型の実験衛星。NASA/JAXAの厳しい安全審査を通過し、世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められた。

 筐体部分の6面パネルには、住友林業の北海道紋別社有林から切り出したホオノキ材を使用し、木材パネルの厚みは4.0〜5.5ミリ。構体の構造はネジや接着剤を一切使わず、精緻かつ強固に組み上げる日本古来の伝統的技法「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」を採用した。

 木材宇宙曝露(ばくろ)実験では温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥(は)がれなどはなく、木材の優れた強度や耐久性を確認している。

 宇宙空間ではスペースデブリ(宇宙ごみ)とならないように、役目を終えた地球低軌道を周回する人工衛星は、大気圏に突入させて燃焼することが国際ルールで定められている。従来の金属製衛星では、燃焼の際にアルミナ粒子と呼称する微粒子が発生し、地球の気候や通信などに悪影響を及ぼす可能性があったが、木材であれば大気圏再突入で燃え尽きる。

木造人工衛星「LignoSat」の宇宙でのイメージ 木造人工衛星「LignoSat」木造人工衛星「LignoSat」の宇宙でのイメージ 出典:住友林業プレスリリース
完成した木造人工衛星「LignoSat」フライトモデル(打ち上げ実機) 出典:ウッドデザイン賞 Webサイト

 住友林業は、「宇宙空間での木材利用が公式に認められたことは、宇宙業界にとっても木材業界、森林業界にとっても貴重な第1歩。宇宙など過酷な環境下のみならず、地球上でも従来使われてこなかった境域での木の可能性を広げ、更なる木材利用を推進する上で大きな意義がある」としている。

 ウッドデザイン賞の審査では、「燃える素材の木材特性を生かし、新領域での木材利用の可能性を追及した意欲的な試み。従来の金属製人工衛星から発生する微粒子問題を木材利用によって解決を目指す、サイエンス分野でのアプローチは新規性が高い」と評された。

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