大東建託は2021年以降、堅調にエンゲージメントを向上させてきました。現在は、経営のマテリアリティ(重要課題)の1つである「人材・組織」のKPI(重要業績評価指標)にも、エンゲージメントを設定しています。
2024年11月の調査結果では、従業員エンゲージメントを偏差値化した「エンゲージメント・レーティング」が、全11段階のうち2番目の「AA」、エンゲージメントスコアは「64.2」で、同年5月の調査から連続して「AA」を達成しました。
この成果により、エンゲージメントが高い企業を表彰する当社主催の「ベストモチベーションカンパニーアワード2025」では、大東建託が大手企業部門(5000人以上)で2位を獲得しました。グループの大東建託リーシング、大東建託パートナーズもそれぞれの部門でランクインを果たすなどグループ全体でエンゲージメント向上を実現しています。
また、エンゲージメントが向上した結果、特定の職種の離職率が低下するという効果も見られました。支店の業績とエンゲージメントの相関も現れつつあり、エンゲージメント改善に向けた取り組みがさらに加速していく兆しを見せています。
大東建託の成功要因は、職種別課題に的確にアプローチすると同時に、経営層が深くコミットメントしたことがあります。担当職種の課題を理解した役員が責任を持って改善活動を進めたことで、全国に支店を持つ大きな組織であっても、効果的にエンゲージメントを高めることができました。
経営層のコミットメントの背景には、激変する市場環境に強い危機感を持ち、エンゲージメント向上を経営の重要課題と捉えていたことがあります。役員報酬のKPIの1つに「従業員エンゲージメントスコア」を採用していることにも、その本気度が現れています。
一般的に、エンゲージメントを向上させるのは人事や管理職の役割だと思われがちですが、大東建託はそのように考えていません。時には経営層が積極的に改善に関与していくことも必要だと捉えています。
こうして、エンゲージメントの高さによって「誰が改善活動を主導するのか」「どのように進めるのか」を柔軟に切り替え、どんな支店や部署であっても適切な改善に取り組める状態を実現したのです。
建設業では、「本社」と「現場」との距離が遠いことなどが、組織改善が進まない要因の1つとされています。
しかし組織の問題は「人」ではなく、人と人との「間」に生じるものです。要素還元的に「本社が悪い」「現場が改善しない」など、どちらかに責任を押し付けるだけでは意味がありません。
今回紹介した事例のように、経営層や経営企画/人事部門などが主体となって解決を図る「全社課題」と、現場/事業所レベルで解決を図る「個別組織課題」に分けて、それぞれ対策を講じるがことが不可欠です。
筆者が組織人事コンサルタントとして改めて感じるのは、日本の建設業には、高い技術力と大きな可能性があるということです。かつては大学生の就職志望企業ランキングでも上位に名前を連ねた業界でありながら、「3K」(キツイ/汚い/危険)というイメージや、少子化による就業人口の減少などが重なり、近年は若年層が就職先として検討しづらい状況にあるのは、非常にもったいないと感じています。
だからこそ、建設業で働く醍醐味やものづくりの感動がより多くの人に伝わり、再び「この業界で働きたい」と思われるようになることを心から願っています。現場で汗を流す人の生き生きとした姿、壮大なプロジェクトに関わる喜びなどが伝われば、自ずと業界全体のイメージも変わっていくはずです。
本連載でお伝えしてきたエンゲージメント向上のヒントを土台に、組織の力を高め、持続的な成長へとつなげていただけるよう、私たちも日本の建設業を盛り上げるパートナーとして、今後さらに支援の幅を広げていきます。
皆さまの挑戦が未来の建設業を彩り、明るい光をともすきっかけになりますよう、心から応援しています。
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