速度や消費電力、通信距離などそれぞれの方式に特徴があります。Wi-Fiは身近に皆さんも利用されることが多いでしょう。右上の「LPWA(Low Power Wide Area)」は、土木で対象とする都市や道路、河川など広域の監視を低コストで行う方法として注目されています※7。例えば構造物の劣化のモニタリング※8、道路の浸水検知※9、人流計測※10など多様な場面での利用が検討されています。
※9 「道路冠水深の予測への重回帰分析とニューラルネットワークの適用」小林亘/AI・データサイエンス論文集3巻J2号p661-667/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2022年
LPWAに限らず単一の通信方式では、全ての用途をカバーすることはできないため、各方式それぞれの特徴を生かし、状況やニーズに応じて適材適所で用いる必要があります。文献11では、下図のようにインフラ管理のためのデータ連携基盤が提案されていますが、単一の通信方式ではなく、各種の通信方式の連携を想定しています※11。
※11 「インフラデータプラットフォームによるデジタルツインの実装と将来展望」土橋浩/AI・データサイエンス論文集4巻2号p1-12/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年
能登半島地震では、通信サービスが利用できなくなった地域が多く発生したことから、米SpaceXの低軌道衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」が広く活用されました※12。従来の衛星通信は、切れ目なく通信を提供するために、高度3.6万キロの静止軌道上の衛星が用いられてきました。Starlinkは静止軌道よりはるかに近い高度550キロの低軌道に、数千に及ぶ多数の衛星を用いることで、通信の往復時間を短縮して高速通信を実現しています。
※12 総務省「令和6(2024)年版 情報通信白書/第I部 特集:令和6年能登半島地震における情報通信の状況」
衛星通信サービスを利用することで、通常の通信が困難な山間の工事現場でのICT活用や災害対応の迅速化が期待されます。下図は、災害時に衛星通信と地上の通信を組み合わせて迅速に通信を展開するコンセプトです。災害現場でも、画像や3次元計測をはじめとしたデータを簡易に取得するシステムが用いられており※13,14、機動性の高い通信でクラウドと連携することで、効果的な災害時のICT活用が可能になるでしょう。※15。
※14 「道路橋の地震時緊急点検におけるデジタルツイン活用の可能性」片山直道,全邦釘/AI・データサイエンス論文集5巻3号p155-164/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年
※15 「河道閉塞発災後の対応初動期を想定した3次元データプラットフォームの検討」島田徹,小林実和,永田直己,全邦釘,永谷圭司/AI・データサイエンス論文集/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/投稿中
建設DXを推進するには通信の確保が前提となります。無線通信技術や衛星通信技術の発展や普及に伴い、山間部の工事現場や災害現場などでも、ますますDXが進むのではないでしょうか。
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