大阪・関西万博の主催者催事となる万博サウナ「太陽のつぼみ」は、最小限のアルミフレームとETFEフィルム、テトラ形状のユニットから成る。外観の特徴となっているつぼみ状のETFEフィルムの施工は、1970年の日本万国博覧会「アメリカ館」で巨大空気膜構造を実現した太陽工業が手掛けている。
東京ドームや東京駅八重洲口グランルーフなどの大型膜構造建築を手掛ける太陽工業とTSP太陽の太陽グループは、大阪・関西万博の主催者催事となる万博サウナ「太陽のつぼみ」の施工を担当している。
万博サウナ「太陽のつぼみ」は大阪湾に面した会場西端に位置し、解放感のある海辺で今展のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を体感できるサウナ。自然光を透過するETFEフィルム膜材に覆われた空間の中で、会期中に約1万5000人が水着でサウナを楽しむことになる。
ETFEフィルムは、フッ素樹脂をフィルム状に圧延した素材。軽量で透過性があり、ガラスに代わる新しい建築表現が可能な材料として注目されている。厚さ0.25ミリにもかかわらず、耐久性は20年以上で防炎性能も有する。
建築デザインスタジオのKOMPASを主宰する小室舞氏が意匠設計したサウナの外観は、花びら風の空気膜クッションが集まって一つのつぼみとなり、太陽に向かって伸びていく生命力溢(あふ)れる美しい造形。太陽のエネルギーが海、草木、風の空気をまとって太陽のつぼみに降りそそぎ、繊細で力強い膜が創り出す空間に自然のエネルギーが満ち、心と体が“ととのう”人としての原点回帰を具現化した。
ETFEフィルムを活用した先駆的な建築物は、米ジョージア州アトランタのドーム型スタジアム「メルセデス・ベンツ・スタジアム」などでもあったが、太陽のつぼみの躯体では構造体も兼ねた最小限のアルミフレームとETFEフィルム(厚さ0.25ミリ、重さ440グラム)、空気だけで構成したテトラ形状のユニットを初採用した。
テトラ形状にすることで、最小部材で最大限の空気のボリュームを包むことができ、軽量ながら断熱性を備えた膜ならではの柔らかなデザインを実現している。光を拡散するETFEフィルムを採用することで太陽の光を鮮やかに映し出し、サウナの中からも自然のエネルギーを感じられる。
太陽のつぼみのエリアは、つぼみのように中の熱を閉じ込めるサウナ、光に染まり風が抜けるラウンジ、3Dプリンタ技術で作った水風呂の3棟のテトラ型ユニットで構成。3棟がデッキスペースで接続しており、繊細で力強い膜の技術と自然の力が織りなす新しいタイプのサウナとなっている。
空気を抜くとコンパクトに収納できるユニット型の躯体や移設しやすい基礎構造で、万博閉会後も新たな地で再利用できる。
太陽のつぼみプロデュースは、サウナに関する研究で医学的効能を明らかにする「日本サウナ学会」を設立するなど、サウナ文化の発信に尽力し「サウナ師匠」といわれる秋山大輔氏が担当した。
太陽工業 代表取締役社長 能村祐己氏は、「万博という世界の人々が集う場で、膜の可能性を追求し、世界平和にどう貢献できるかを考えてきた。膜のサウナとなる太陽のつぼみを通じて、心と身体を解きほぐし、いのち輝く未来社会へとつながる3つの体験をお届けする」とコメント。
3つの体験とは、第一に、サウナの温もりに包まれ、深いリラクセーションの中で自己を解放し、本来の自分とつながること。第二に、世界中の人々と共に特別な空間を体験し、文化や地域の枠を越えてつながること。第三に、五感を研ぎ澄ませ、自然が織りなすさまざまな色、音、香りとの共感覚を体験し、地球とつながること。
能村氏は「3つのつながりが広がることで、太陽グループが目指す、やわらかく、あたたかい社会がより豊かに育まれること願う」と期待を語る。
太陽工業は1970年に大阪で開催された日本万国博覧会(Expo'70)で、東京ドームにも原理が導入された低ライズ方式の巨大空気膜構造を「アメリカ館」で世界に先駆けて実現した。また、当時の会場にあったテント構造物の約9割は太陽工業が手掛け、テントが単なる日除け用途から新しい構造物として世界に認められるきっかけになったという。
【「太陽のつぼみ」建築概要】
名称:大阪・関西万博 主催者催事 万博サウナ「太陽のつぼみ」(英名:EXPO SAUNA “TAIYO TSUBOMI”)≫
場所:万博会場内グリーンワールド
主催:2025年日本国際博覧会協会
協賛:太陽工業
デザイン:KOMPAS
プロデュース:秋山大輔/TTNE
会期:2025年4月13日〜10月13日
建築面積:179.43平方メートル/延べ床面積:160.83平方メートル
構造:管理棟、休憩スペース=S造、サウナ棟、水風呂棟、リラックスラウンジ棟=AL造
設計:KOMPAS、TSP太陽、太陽工業
施工:TSP太陽、太陽工業
運営:アクティオ
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