埼玉県八潮市で2025年1月28日、道路が陥没してできた穴にトラックが転落する重大事故が発生。まもなく3日が経過する中、いまだ復旧のめどが立っていない状態だ。周辺では別の道路陥没も起き、地中のガス管が破損する恐れがあるとして八潮市は避難勧告も発令した。道路陥没を未然に防ぐには、定期的な路面下空洞調査が欠かせないが、交通規制を敷いたり、路面表面の調査とは別に行う必要があったりなど課題があった。
空洞化など道路の状態を把握するには、地下に空洞があるかを調べる「路面下空洞調査」とひび割れや車輪のへこみとなる“わだち掘れ”などを測定する「路面性状調査」を別々に調査する必要があった。
地質や土質の非破壊検査やコンサルティングを行う土木管理総合試験所は、地中レーダーを搭載した高速移動型の調査車両「Road Scan Vehicle(ロード スキャン ビークル)」を活用し、路面下空洞探査と路面性状調査を同時に行う新たなインフラ点検ソリューションを提案している。
Road Scan Vehicleは、1台の車両に路面性状計測システムと路面下探査システムをともに装備し、1度の測定だけで両方の調査が完了する。また、従来の探査車では、低速走行のために交通規制が必要だった高速道路上でも、探査速度は毎時80キロで一般車両の交通の流れの中で探査が可能になる。
路面下空洞調査は、車体後方下部に3次元レーダーアンテナを複数配列し、道路の縦、横、水平方向のそれぞれの面的データを取得。レーダーの周波数は、30MHzから3000MHzまで段階的かつ連続で切り替え、表層の浅いところは高い周波数で高解像度、深いところは低い周波数で解析を行える。1回の走行で幅2.1メートルを探査し、地中内部を縦断面、横断面、水平断面の3次元で表示して地中埋設物や空洞の形状が視覚的に分かる。また、車体上部のRTK-GNSSアンテナで、高精度の位置情報もデータに付与できる。
路面性状調査は、路面撮影ユニットで可視画像や高さ画像を撮影し、画像解析による路面性状を評価。高さデータからは、わだち掘れの量を算出し、車体中央下部のレーザー変位計を活用すれば仮想直線と路面との相対変位から、縦断プロファイルデータを作成して指定区間の平坦性が分かる。
他の設備では、車体後部には回転灯とLED表示板で、後続車両にも探査中を知らせ、安全にも配慮している。
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