2025年で阪神・淡路大震災から30年を迎えます。2024年元旦に発生した能登半島地震の復旧復興も進まない中、過去の自然災害の教訓から、さまざまな角度で被害拡大の防止策や復旧策が求められています。そこで今回は、AIを応用した災害対応の最新研究を参照して、その仕組みと有用性について解説します。
災害への対応には、被害拡大を防ぐためにも迅速さが求められます。現在では災害対応のさまざまな場面やユースケースで、AIの応用が試みられています。
大規模な豪雨災害による浸水被害を対象に、文献1「YOLOv9を用いた航空画像からの浸水域検出と道路浸水箇所の推定」では下図のように、航空画像から浸水域を検出しています。航空画像を用いることで、広域の災害状況を即時に把握することが可能です※1。
本研究では、浸水域を「YOLOv9」を用いたセマンティックセグメンテーションで検出しています。YOLOは高速で物体検出を行い、バウンディングボックスで表示する方法として、連載第16回でも取り上げましたが、最近はセマンティックセグメンテーションも行うこともできるようになりました※2。浸水によって道路が閉塞し、避難行動や復旧活動が妨げられることもあるため、下図右では検出した浸水域と道路データを重ね合わせ、道路浸水箇所を可視化しています。
※2 BUILT “土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(16)高速かつリアルタイムにAIで物体検出する「YOLO」、施工管理や安全確保など建設用途の先端事例【土木×AI第16回】
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
文献3「実環境の空撮画像を用いたため池堤体の部分崩壊を対象とする異常検出」では、地震や大雨の際に発生が懸念される下図のようなため池の堤体部分崩壊などの損傷を対象に、空撮画像から検出しています※3。連載12回で、打音の異常を検出する事例を紹介した深層学習の「オートエンコーダー(autoencoder:自己符号化器)」を画像に適用することで、部分崩壊画像を異常として検出しています※4。
※4 BUILT “土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(12)「見えないものを見る」AIとセンシング技術の可能性【土木×AI第12回】
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