大成建設は、360度カメラと画像認識AIを活用して建設現場の施工状況や資機材の所在を自動で図面化できる「工事進捗確認システム」を機能拡張し、本格運用を開始した。30カ所以上の自社建設現場で試行を重ね、現場確認業務にかかる時間を1日1人当たり1時間以上削減できることを確認している。
大成建設は2025年1月27日、360度カメラと画像認識AIを活用し、建設現場の施工状況や資機材の所在を自動で図面化する「工事進捗確認システム」を機能拡張し、本格的な運用を開始したと発表した。
工事進捗確認システムは、現場巡回時に360度カメラで撮影した動画を画像認識AIで分析し、現場の施工状況と各種資機材の保管場所を自動で図面表示できる。大成建設が2022年に開発し、建設現場での試行を進めてきた。これまで多数の建設現場での使用で得られた課題や工事担当者の利用状況を基に改良し、今回、本格運用を開始した。
工事進捗確認システムでは、巡回ルート上の柱や壁などに図面位置情報を登録した2次元コードマーカーをあらかじめ設置。巡回時に検出したマーカーの登録情報と、360度カメラから取得したセンシングデータを基に、現場内の位置情報を自動で取得する。撮影した動画から、壁(6工種)/天井(6工種)/床(4工種)の内装工事16種類、資機材24種類をAIで自動認識し、位置情報と組み合わせ、工事の進捗状況や資機材の所在などを図面化する。
収集したデータは、メッシュWi-Fi環境の構築により各種センサーや情報機器と連動する自社デジタル情報標準基盤「T-Basis X」上で閲覧可能だ。T-Basis Xとの連携により、重点的に状況確認したい場所や資機材の情報はT-Basis Xの定点カメラや無線タグでリアルタイムに把握し、それ以外の場所や資機材についてはシステムで現状を確認するといった使い方が可能だ。
また、従来のシステムでは現場撮影時に360度カメラに加え専用アプリをインストールしたスマートフォン使用する必要があったが、360度カメラのみで運用できるように改良し、操作を簡易化した。
これまでに30カ所以上の自社建設現場で試行し、運用実績は撮影日数延べ600日、撮影フロア数延べ1800階を超え、現場確認業務にかかる時間を1日1人当たり1時間以上削減できることを確認した。また、場所を選ばずに現場内を短時間で確認でき、スムーズな合意形成につながる他、報告書などの書類作成にも有効活用も可能だ。
今後はシステムの運用により取得した各種データを生かしてシステム高度化を図るとともに、建設現場への普及展開を進め、建設工事のDX推進と生産性向上を推進する。
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