国土交通省は2024年度インフラDX大賞「工事/業務部門」の国土交通大臣賞に、福留開発による「令和4〜5(2022〜2023)年度 仁淀川中島地区下流護岸外(その1)工事」を選定した。完全内製化による全面的ICT活用や3Dプリンタを活用した擬石型曲線護岸パネル導入などの取り組みを評価した。
国土交通省は2024年12月20日、2024年度インフラDX大賞「工事/業務部門」の国土交通大臣賞に、福留開発による「令和4〜5(2022〜2023)年度 仁淀川中島地区下流護岸外(その1)工事」を選定したと発表した。完全内製化による全面的ICT活用や3Dプリンタを活用した擬石型曲線護岸パネル導入などの取り組みを評価した。
2024年度インフラDX大賞では、2023年度に完了した国や地方公共団体などの発注工事/業務のうち、データとデジタル技術を活用した建設生産プロセス高度化/効率化の取り組みについて、有効性や先進性、波及性の観点から審査を実施。計26団体を受賞者に決定した。
国土交通大臣賞は、福留開発の他、地方公共団体などの取り組み部門で栃木県の「ICT/AI技術を活用した道路交通の円滑化」が、i-Construction・インフラDX推進コンソーシアム会員の取り組み部門で小澤建設の「令和4(2022)年度 美和ダム上流土砂掘削工事におけるデータマネジメントの活用」が選定された。
福留開発は、高知県土佐市において、四国地方整備局発注の仁淀川の侵食対策を目的とした高水敷および低水護岸の整備を実施。工事では完全内製化による全面的ICT活用に取り組み、測量や出来形計測、写真撮影、品質管理の業務を効率化した。また、複雑な曲線/表面形状の既設護岸と新設護岸の取り合わせ箇所で、3Dプリンタを活用した擬石型曲線護岸パネルを導入。施工に要する手間と時間を削減しながら、現地の複雑な地形に合わせた施工を実現した。
内製化によるICT活用は、従来工法と比較して工期短縮や現場作業の効率化ができるだけでなく、若手技術者の早期育成や即戦力化など多岐にわたる効果が見られたという。また、3D設計データを作成し、ICT建機で無丁張化を実現することで、測量作業の作業日数を40%、労務人数を54%削減。さらに、3Dプリンタの活用で従来工法に比べ43%の工期短縮、現場作業の省力化に寄与した。パネル表面に凹凸や円筒を設けることで河川生物にも配慮している。
小澤建設は、長野県伊那市において、国土交通省中部地方整備局発注の「令和4(2022)年度 美和ダム上流土砂掘削工事」でデータ活用による現場マネジメントに取り組んだ。施工情報のデジタル化により効率的な現場マネジメントを実現し、現場間が約20キロ(車で約30分)離れた状況で、1人の監理技術者で2現場の管理を実施。3カ月の工期短縮を達成した。
ダンプの位置情報管理による待機時間の削減、遠隔からの進捗把握と指示出し、ARによる現場の見える化などに取り組んだ他、ドローンによる空中写真測量やICT建機の導入を推進。従来の経験に依存した方法から、位置情報や点群データを活用した柔軟な対応を可能にし、無駄を排除した精度の高い施工管理を実現した。
デジタル技術とARの活用により、若手管理者でも効率的な進捗管理ができ、現場の生産性向上を可能としたことや、スマートフォンやタブレット端末を用いたヒヤリハット対策、ARによる作業員間の意思統一は転用が容易で、他現場への展開も期待できることなどが評価された。
栃木県は、ICT/AI技術を活用した道路交通の円滑化に取り組んだ。宇都宮東部地域ではLRTが2023年8月に開業することで、既存道路の車線が減少することや、信号現示サイクルが複雑になるなどの交通ルールの変更により、一定程度の混乱が生じることが懸念されていた。
今回の取り組みでは、周辺道路環境への影響を確認するため、自動車交通流の変化や、交差点付近での挙動の変化などに着目。ICTやAI技術を活用して、LRT開業による交通状況を分析するとともに、発生している課題の改善を試みた。WebカメラのAI画像解析などにより交通状況を分析した中、道路の混雑度に偏りが生じていることが判明。ICTを活用した民間プローブデータにより、リアルタイムの旅行速度を計測し、LED表示板により現地で情報提供を行ったことで、並行路線の自動車交通量の平準化に寄与したことを確認した。
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