清水建設は、コンクリートから発散するアンモニアガスを大幅に抑制する新技術「SUSMICS-Ca」を開発した。バイオ炭を混合することでアンモニア放散量を75%削減し、建物の開館前に必要な“枯らし期間”を従来の5分の1に短縮する。実用化の第1号として、2026年4月に着工した広島県広島市の「泉美術館」の床工事に適用が決定し、2027年4月頃に約250立方メートルを打設する。
美術館や博物館の開館前、半導体工場の稼働前に、コンクリートを長期間放置して乾燥させる「枯らし期間」という工程がある。コンクリート構成材料のセメントや混和剤から、化学反応によって微量のアンモニアガスが長期間にわたって放散するためだ。アンモニアガスは、絵画の油絵具を茶色に変色させたり、半導体製造施設の超微細な電子回路の形成を阻害し、深刻な製品不良を引き起させたりする原因となる。
文化庁の指針では、室内のアンモニア濃度を推奨値(30ppb以下)まで低減させるために、コンクリート打設から開館までに「夏を2回越す」枯らし期間の確保が必要と定めている。言い換えれば、足掛け2年近く建物をオープンにできないことを意味し、施主にとっては多大な機会損失となっていた。
そうした施工上の特殊な問題に対して清水建設は、木質バイオマスを炭化させた「バイオ炭」をコンクリートに混合することで、アンモニアガスの放散を劇的に抑え込む新技術「SUSMICS-Ca(サスミックスシーエー)」の開発に成功した。理論上、従来の枯らし期間を5分の1程度にまで短縮できる日本初の画期的な建材だ。
2026年6月24日に東京都江東区越中島の清水建設 技術研究所で開催した技術発表会で、開発を担当した技術研究所 建設基盤技術センター 資源循環グループの矢野慧一氏は、「新技術の核となるのは、CO2を吸収したオガ粉などの木質バイオマスを加熱処理したバイオ炭だ」と強調した。
技術名称のSUSMICS(サスミックス)とは「Sustainable」「SMI(炭)」「Carbon Storage(炭素貯留)」の各頭文字を取ったもので、バイオ炭を製造時に混入させた環境配慮の施工技術シリーズの名称だ。これまでにコンクリ「SUSMICS-C」、地盤改良土「SUSMICS-G」、アスファルト「SUSMICS-A」、ソイルセメント「SUSMICS-S」を展開している。
今回対象となるSUSMICS-Cは、2021年から開発に着手し、完成した2022年以降は道路舗装やレベルコン、土間コンなどに順次適用してきた。SUSMICS-Caは、CO2排出削減だけでなく、アンモニア放散抑制も両立させた派生技術として、「Concrete for ammonia」の略称を後ろに冠している。
バイオ炭そのものついては、2019年改良IPCC(気候変動に関する政府間パネル)ガイドラインで、「燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350度超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物」と定義されている。
資源循環グループ グループ長の小島啓輔氏は、コンクリートに使うメリットについて、「1キロ当たりのCO2固定量が炭酸カルシウムの8倍以上(実質約6倍)と、カーボンリムーバル(炭素除去)を効率的に実現できる。全国の生コン工場でも製造可能で、施工性や品質が普通のコンクリートと同等、現場打ち施工も可能だ。さらに、高炉セメントB/C種といった低炭素セメントと併用すれば、環境負荷をマイナスにする“カーボンネガティブ”も実現する」と解説した。
製造工程では、水、セメント、砂、砂利に加え、バイオ炭を1立方メートル当たり20〜80キロを配合する。しかし、実用化への道のりは平坦ではなかったという。小島氏は「バイオ炭を単純にコンクリートに混ぜるだけでは、品質を確保できない。バイオ炭の種類によっては、うまく混合できないケースもある。そこで、流動性や強度、耐久性を確実に担保できるように、社内で厳格な調合設計のルールを定めた。その結果、構造材としても適用可能なコンクリートを完成させることができた」と苦労を明かした。
SUSMICS-Caと通常のSUSMICS-Cとの製造時の違いは、アンモニア放散の少ない混和剤を選定して混ぜる点にあり、コスト比で1.5〜2倍の差が生じるという。
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