清水建設は、日本製鉄発注の瀬戸内製鉄所阪神地区の製鉄設備建設工事において、材料噴射型3Dプリンティング技術を有筋構造部材の施工に初適用した。
清水建設は2024年11月11日、日本製鉄から受注した瀬戸内製鉄所阪神地区の製鉄設備建設工事において、材料噴射型3Dプリンティング技術を有筋構造部材の施工に適用したと発表した。同技術の実工事への適用は初めて。
適用対象は、設備基礎となる断面積0.4平方メートル、高さ2メートルの鉄筋コンクリート柱2体。実現場でのオンサイト施工に際して、新たにロボットアーム型のモバイルプリンタと自動材料製造装置を開発した。装置は10トントラックで現場に搬入し、計画位置で直接施工を実施。材料噴射から表面仕上げまで1体あたり2時間50分で完了し、在来工法と比較して施工期間を約4割短縮できた。
現場では材料押出型のプリンティングも実施。同じモバイルプリンタを使用して、6.5(縦)×4(横)×2(高さ)メートルの水槽構造物の型枠を構築した。
清水建設は2019年、材料押出型3Dプリンティング用の繊維補強セメント複合材料「ラクツム」を開発し、建築/土木分野での実用化を進めてきた。しかし、材料押出型は材料をノズルの真下へ押し出しながら積層するため、鉛直方向の鉄筋を造形物内に組み込むことができず、有筋構造部材を直接造形するのは技術的に困難だった。
この課題を解決するため、圧縮空気でノズルからプリント材料を噴射し、造形物を製作する材料噴射型の3Dプリンティング技術に着目。噴射型向けのプリント材料を開発し、ロボットアーム型の3Dプリンタが鉄筋の外周から内部に向けて材料を吹き付けることで、有筋構造部材を造形する技術を構築した。この技術では、鉄筋の外周を旋回するロボットアーム先端のノズルから斜め下方に材料を噴射し、鉄筋内部への充填が完了した後、表層全体に重ねて吹き付ける。完成した造形体は在来工法による鉄筋コンクリート部材と同等以上の構造耐力と靱性を確保。さらに、木製型枠の使用量削減による環境負荷の低減効果も見込める。
清水建設では今後、新設構造物への適用に加え、既設構造物の補修や補強、応急復旧への適用も視野に、技術開発を進めていく。
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