鹿島建設は、秋田県で施工中のダム工事で、タワークレーン遠隔操作システムと自動運転システム、車両運行管理システムを組み合わせて適用した。従来と比較して生産性を約20%向上し、安全性も高めた。
鹿島建設は2024年11月5日、秋田県で施工中の成瀬ダム堤体打設工事に、タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」を導入したと発表した。タワークレーンの「自動運転システム」と、車両運行管理システム「スマートG-Safe」を組み合わせてコンクリート打設を実施。従来と比較して生産性が約20%向上した。
TawaRemoは、地上に設置した専用コックピットに、運転席と同様に操作レバーやフットスイッチ、各種モニターを搭載。モニターには、タワークレーンに設置した複数台のカメラ映像や荷重などの動作信号/異常信号を表示し、従来のタワークレーンの運転席と同等の作業が遠隔から行える。タワークレーン側に設置したジャイロセンサーにより、風や荷運びで生じるタワークレーンの細かな振動を感じながら操作できることも特徴だ。
タワークレーンの自動運転システムは、最適な運搬ルートを記憶し再現する「ティーチングプレーバック方式」を採用。人が作業する場合と比較して、習熟度や身体的疲労度、天候などに左右されることなく、長時間連続での繰り返し作業が行える。自動運転中はオペレーターが監視に集中できるため、安全性も向上する。
スマートG-Safeは、鹿島建設が開発した車両運行管理システム。衛星測位システム(GNSS)によって得られた位置情報をもとに、工事用車両や通行人の安全/運行管理をリアルタイムに行える。今回はタワークレーン本体に搭載し、作業時の吊り荷直下(直径6メートル)の立ち入り禁止エリアとタワークレーンのブームや技能者の位置の干渉状況をコックピットの画面とスマホの双方で確認しながら作業を進めた。
これらの3つのシステムを組み合わせたことで、従来と比較して、オペレーターの移動時間を一日当たり65分短縮し、クレーン稼働時間を約16%向上。1回当たりの作業時間を平均約30秒短縮し、コンクリートの平均打設速度約5%向上などの成果につながった。
鹿島建設は今後、新システムを橋梁(きょうりょう)工事などダム以外の工事にも適用し、技術検討を進める。将来は、複数台のクレーンを一人のオペレーターが遠隔地から運転できるシステムの実現を目指す。
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