帝人と前田建設工業が共同開発した木材の柱と梁を接合する工法が、日本建築センターの特別工法評定を取得した。新工法はプレストレス技術を木造ラーメン構造に応用し、接合用の金物を柱と梁の間に設置して一体化する。
帝人と前田建設工業は2024年10月17日、共同開発した木材の柱と梁との接合工法が、日本建築センターの特別工法評定を取得したと発表した。
新工法は、接合用の金物を柱と梁(はり)の間に設置し、プレストレス技術を用いて柱や梁、接合金物を一体化することで、木造建築の柱梁接合部よりも大幅に耐力が向上する。プレストレス技術は、部材にあらかじめ圧縮応力をかけておくことで、荷重により部材に生じる引張応力への耐性を高める。従来は鉄筋コンクリート造に使用されていたが、両社は木材ラーメン構造に応用した。
柱梁接合部に接合金物を配置しているため、大地震が発生した際などに柱や梁の木材部分の損傷を低減する。両社によると、鉄骨造と同レベルの靭性に達したという。
今回取得した評定では、幅12メートル、高さ5メートルの室内空間を確保した条件で審査を通過した。既存の木造ラーメン構造と比べて、使用する木材の断面積が35%縮小し、室内の大空間に適することも確認している。
ラーメン構造の接合金物は、木材パネルで隠すことも可能で、室内からは木材のみが見える木の現しのデザインにもできる。
実証実験は、前田建設工業の茨城県取手市にあるICI総合センターで、構造性能を検証した。結果をもとに比較シミュレーションを実施し、今回の工法による木造ラーメン構造が鉄骨造ラーメン構造と同レベルの性状を有することを確認している。
建物の内部に大空間を実現するには、室内に余分な壁や柱を配置しないラーメン構造が広く採用されている。ラーメン構造は柱と梁を一体化する剛接合が必要だが、剛接合時には柱と梁の接合部に負荷がかかるため、耐力が小さい木造の柱と梁では剛接合が難しく、大空間を確保した建物は鉄筋や鉄骨造が一般的。そのため、木造建築で大空間を実現するには、柱梁接合部の耐力や剛性の確保が課題となっていた。
こうした中、壁の少ない木造建築を実現してきた前田建設工業と、炭素繊維を用いた高機能繊維強化集成材「LIVELY WOOD」の開発過程でプレストレス技術を木材に応用する方法を開発した帝人が、それぞれの知見を合わせることで木造建築の課題を解決できると考え、新しい工法の共同開発に至ったた。
両社は今後、木造建築物へ採用を進める。また、接合金物を鉄骨部材にも接合できるため、鉄骨造の建築物への部分的な適用可能性も検証する。
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