サンエーとNobestが共同で進める太陽光パネルの大量破棄、故障、盗難に向けたAIプロジェクトが、神奈川県のオープンイノベーション支援プログラム「ビジネスアクセラレーターかながわ」に採択された。
サンエーは2024年10月16日、環境系ITスタートアップ企業のNobestと共同で進める太陽光パネルの大量破棄、故障、盗難に向けたAI(人工知能)プロジェクトが、神奈川県のオープンイノベーション支援プログラム 「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」に採択されたと発表した。
2000年代後半に再生可能エネルギーの普及が世界的に加速し、日本では2012年に「固定価格買取制度(FIT)」が導入された。多くの事業者や一般家庭が太陽光発電システムを導入するようになった。特にメガソーラーなどの大規模太陽光発電所が全国各地で建設され、再生可能エネルギーの利用が広がった。
日本政府は2020年に2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げ、この目標に向け、再生可能エネルギーのさらなる活用が期待されており、太陽光発電もその中核を担っている。
現在は、「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」を目指す住宅に対し、国や地方自治体から補助金が提供されている。太陽光発電と蓄電池、エネルギー効率の高い設備を組み合わせた住宅への導入が推進されている。
2012年に始まったFITは、太陽光発電設備の普及に貢献したが、FITによる買い取り制度の適用期間は、住宅用の小規模太陽光発電システム(10kW未満の住宅用太陽光発電)は10年間、事業用の太陽光発電(10kW以上の事業用太陽光発電、メガソーラー)は20年間の固定価格買い取り期間となっている。そのため、2022年以降、余剰電力の買い取りが無い設備を撤去し、産業廃棄物として廃棄する流れが起き始め、2030年以降は投資回収が終わったメガソーラーの設備が大量に破棄されることが推測されいる。
また、現在、多くの太陽光発電設備で、さまざまな故障や異常が発生している。発電量異常でも、パネル故障や配線接触不良、獣害や人害、天気によるケース、その他にもパワーコンディショナーの異常、故障やブレーカーの問題もある。設備施工会社やメンテナンス会社は、オーナーからのトラブル連絡に対して原因が把握できていないため、現地に出向き、原因を確定した後に修理を行うために再訪する手間が発生している。
さらに金属製の銅線ケーブルを狙った太陽光発電設備に関連する盗難事件は近年増加しており、2023年の1月から6月までに、太陽光発電施設でのケーブル盗難事件が9522件発生。うち5361件が2023年、4161件が2024年前半に起きており、特に関東地方で約90%の事件が集中している。
1994年に創立し、他社に先駆けて1998年から太陽光発電システム施工事業を開始し、7000件以上の実績があるサンエー 代表 庵崎栄氏は、太陽光発電設備が急速に広まっていく中、社会問題となり始めている大量破棄問題、原因不明の故障、多発している盗難事件を解決すべく手段を考えていた。Nobest 代表 石井宏一良氏と出会い、2つの大きな課題を解決するための共創事業を立ち上げた。
サンエーとNobestの共同プロジェクトは、Nobestが開発する電流センサー「Nobest-Clamp」を太陽光設備の主要な箇所に置き、AIを用いた自動監視システムで常時監視する。太陽光設備の故障箇所を自動で判断できるため、ダウンタイム(設備が稼働できない期間)の短縮に寄与し、常時監視で盗難対策も強化できる。
また、Nobestが2024年7月に発売した自社開発したNFTタグを太陽光設備に設置し、設備情報を管理するシステムを開発することで、2030年までには中古車市場のようなリユース市場やリサイクル市場で活用し、地球温暖化の解決に寄与できるとしている。
Nobestは、太陽光パネルの大量破棄問題に向けた回収やリサイクルの仕組みづくりを進める。サンエーは、故障発生時のダウンタイムの短縮や事故盗難対策に関する実証に向けて、実験場所を提供し、社会実装に向けて展開していく。
ビジネスアクセラレーターかながわは神奈川県が運営する協議会で、大企業やベンチャー企業、研究機関、支援機関などが参画している。大企業とベンチャー企業との連携プロジェクトの創出やオープンイノベーションに向けたコミュニティー形成が目的で、採択したプロジェクトは2025年2月下旬の成果発表を予定している。
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