建設業の課題解決には「情報とそのマネジメントの成熟度が不可欠」伊藤久晴氏がBSIで講演BIMを軸とした建設業の未来像 Vol.2(2/3 ページ)

» 2024年05月22日 12時43分 公開
[川本鉄馬BUILT]

課題解決の鍵は「設計・施工の情報とそのマネジメント」にアリ

 英国は、2011年に国策としてBIMへの取り組みを開始した。具体的には「Construction Strategy(英国BIM戦略)」を公開し、社会課題の明示と解決に向けた目標を定めた。伊藤氏は、「ここで大きく時代が変わったといわれている」と補足。

 英国は、こうした政策によってBIMを活用した建物のネットゼロへの取り組みをスタートさせた。2011年からの時を経て規格化し、現在は2050年までに既存建物含め、温室効果ガスのネットゼロを掲げる方針「TIP Roadmap to 2030(TIP 2030)」に受け継がれている。

英国の方針「TIP 2030」で示すビジョン 英国の方針「TIP 2030」で示すビジョン 提供:BIMプロセスイノベーション

 英国が2011年にBIMを国策に定めたことで、これまで設計・施工・運用などに対するアプローチやプロセス間での協働生産に関する技術(共有デジタル表現)として使われてきたBIMが、“情報マネジメント”に移行することとなった。伊藤氏は、「BIMの技術的な成熟度レベルから、情報マネジメントの成熟度へと関心が移ってきたと覚えてほしい」と説明する。

英国でのBIMの概念の変化 英国でのBIMの概念の変化 提供:BIMプロセスイノベーション

 社会課題の解決に当てはめれば、情報をどうやってマネジメントするかが重要になると言い換えられる。“情報”とは、BIMのモデルだけではなく、情報には設計・施工の全ての情報が含まれる。伊藤氏は、写真やビデオ、書類など、「設計・施工に関するあらゆる情報を整理するところから始めなければならない。情報を統合してデジタル化することが必要だ」とした。

課題解決に向けた情報のあるべき姿 課題解決に向けた情報のあるべき姿 提供:BIMプロセスイノベーション

 設計・施工に関する情報を情報コンテナとして共通データ環境(CDE)に入れると、マネジメントや構造化が可能になり、結果が生まれる。こうした環境が、単なる設計・施工の情報だけではなく、社会課題を解決する情報基盤のベースにもなる。そのためには、技術中心の“つながらないBIM”ではなく、プロセス中心の“つながるためのBIM”が必要で、実現には最初から連携できるように計画し、実施することが必要と説明した。

プロセス中心のつながるためのBIMが重要 プロセス中心のつながるためのBIMが重要 提供:BIMプロセスイノベーション

 さらに、伊藤氏は、運用の方向性が示されていないのも問題とし、一例として設計・施工の情報を火災時の対応に役立てている英国の例を示しながら、その有用性を説いた。

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