英国は、2011年に国策としてBIMへの取り組みを開始した。具体的には「Construction Strategy(英国BIM戦略)」を公開し、社会課題の明示と解決に向けた目標を定めた。伊藤氏は、「ここで大きく時代が変わったといわれている」と補足。
英国は、こうした政策によってBIMを活用した建物のネットゼロへの取り組みをスタートさせた。2011年からの時を経て規格化し、現在は2050年までに既存建物含め、温室効果ガスのネットゼロを掲げる方針「TIP Roadmap to 2030(TIP 2030)」に受け継がれている。
英国が2011年にBIMを国策に定めたことで、これまで設計・施工・運用などに対するアプローチやプロセス間での協働生産に関する技術(共有デジタル表現)として使われてきたBIMが、“情報マネジメント”に移行することとなった。伊藤氏は、「BIMの技術的な成熟度レベルから、情報マネジメントの成熟度へと関心が移ってきたと覚えてほしい」と説明する。
社会課題の解決に当てはめれば、情報をどうやってマネジメントするかが重要になると言い換えられる。“情報”とは、BIMのモデルだけではなく、情報には設計・施工の全ての情報が含まれる。伊藤氏は、写真やビデオ、書類など、「設計・施工に関するあらゆる情報を整理するところから始めなければならない。情報を統合してデジタル化することが必要だ」とした。
設計・施工に関する情報を情報コンテナとして共通データ環境(CDE)に入れると、マネジメントや構造化が可能になり、結果が生まれる。こうした環境が、単なる設計・施工の情報だけではなく、社会課題を解決する情報基盤のベースにもなる。そのためには、技術中心の“つながらないBIM”ではなく、プロセス中心の“つながるためのBIM”が必要で、実現には最初から連携できるように計画し、実施することが必要と説明した。
さらに、伊藤氏は、運用の方向性が示されていないのも問題とし、一例として設計・施工の情報を火災時の対応に役立てている英国の例を示しながら、その有用性を説いた。
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