中高層住宅や大中規模建築物(その他建築物等)で使用されるサッシについては、ユーザーが求める性能や価格の違いに応じて、「1.普及品(アルミSGサッシ及びアルミPGサッシ)」「2.付加価値品(アルミ樹脂複合サッシ)」「3.高付加価値品(樹脂サッシ)」の3つの市場カテゴリーが成立している。
もし、これらの市場カテゴリーごとに区分してトップランナー目標基準値の設定を行った場合、各カテゴリー内では断熱性が向上するものの(図2の青矢印)、より性能値の高いカテゴリーへの移行は促進されず、サッシ全体としての性能値向上は限定的となると懸念される。
よって、戸建・低層共同住宅等用と同様に、「その他建築物等」についても、サッシにおける材質①〜③の市場カテゴリーは同一区分として、一つの目標基準値を定めることとする。目標基準値はより高性能な製品カテゴリーへの移行(図2の赤矢印)を積極的に評価する仕組みとして、目標年度におけるそれぞれのシェアを勘案した値を設定する。
「その他建築物等」は、その建物の用途によって求められる熱損失防止性能が異なるため、建物の用途に応じた適切な目標基準値を設定することが求められる。
「戸建・低層共同住宅等」用サッシの2030年度目標基準値を検討した際には、第6次エネルギー基本計画において「2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEBの水準の省エネルギー性能の確保を目指す」とされていることを踏まえ、2030年の住宅の性能から、当該性能を実現するために必要とされる窓の熱損失防止性能を逆算(バックキャスト)し、目標基準値は、この窓の熱損失防止性能を基に算出した。よって、「その他建築物等」のうち共同住宅については、これと同様に、バックキャスティングにより目標基準値を先行して設定することが可能である。
他方、「その他建築物等」のうち非住宅については、2030年に求められる性能から外皮性能を逆算することが困難であり、バックキャスティングによる方法を取ることが出来ない。
よって、非住宅については実績値に基づいた目標基準値を設定することとするが、現時点、サッシ製造事業者では建物の用途に関する出荷データが整備されていないため、建物用途区分ができないことが報告されている。このため国は、まずはサッシ製造事業者に目標となる年度を示した上で、建物用途別データの整備を行うよう働きかけることとする。
サッシ製造事業者における建物の用途区分は、既存の建築着工統計上の区分のほかに、「複数用途(住宅を含む)」、「複数用途(住宅を含まない)」、「ホテル・旅館・宿泊施設」を追加したものとする(表3)。
このような建物用途別の出荷データを整備するためには2年程度を要するため、建物用途別に性能値の実績データが取得できるのは、早くても2026年の夏頃になると想定される。
また、建築材料等判断基準WGでは今後、さらに細分化(例:用途、階層など)した区分ごとに目標基準値を設定すべきかどうか、設定する場合の区分案について検討する予定としている。
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