住友林業ホームテックは、AIを用いた「断熱改修工事提案システム」を開発した。AIは、改修で向上する断熱性能の見込み値を、改修前の熱損失係数に加えてスコア化し、顧客の求める性能やコストなどに適合した断熱改修工事を提示する。
住友林業ホームテックは2023年12月22日、AIを用いた「断熱改修工事提案システム」を開発したと発表した。同月21日から、東京、名古屋、大阪で利用を開始しており、全国の省エネ基準地域区分で、5、6、7にあたる地域を対象に展開する。
システム開発にあたっては、住友林業ホームテックと住友林業筑波研究所が断熱改修の基本計画から実施方法を検証し、AIによる熱画像解析は燈(あかり)が担当した。
新システムでは、室温や外気温から簡易的に既存住宅の断熱性能値を算出するインテグラルの「スマートワトソン君2」などを用いて、熱損失係数(推定Q値)を算出。AIで室内の熱画像を解析し、断熱性能の弱点部位(床や天井、窓など)を特定する。さらに、断熱などの性能等級4または5に適合する性能値の資材候補から、効果的な改修に必要な部材を選択し、最適な改修工事を提示する。
また、改修で向上した断熱性能の見込み値を、改修前の熱損失係数に加えてスコア化することで、顧客の求める性能やコスト、改修範囲などの条件に適合した工事プランになるとしている。
AIシステムの導入で、事前の現場調査で長時間にわたる立ち会いが不要となる他、担当者の知見によらない定量的な断熱診断も可能となる。
住友林業ホームテックは開発経緯について、「既存住宅の中には建物の仕様が確認できる図面や仕様書などが残っていないケース、部材が経年劣化で性能が低下しているケースがある。しかし、既存住宅の断熱性能の確認は容易ではなく、新築時に比べ掛かる費用が高くなりがちで、断熱改修が進まずにいた。そこで効率的かつ効果的な調査で、簡便に断熱改修の提案ができる本システムの開発に至った」と説明する。
今後は、深層学習を用いた物体認識や温度データ解析で、撮影した熱画像から低温部位、断熱性能の弱点部位を抽出、発見するアルゴリズムの精度を高める。さらに、現状では断熱性能向上の評価を加えていない階間断熱材などの改修工事や木製家具なども、断熱性能向上への影響を調査検証して評価を見直す。
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