AIと車両搭載IoTセンサーで、交通インフラの問題を解消する最新研究【土木×AI第21回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(21)(1/2 ページ)

連載第21回は、交通インフラの事故防止や維持管理の諸問題を解決する目的で、車両搭載のIoTセンサーで取得したデータをAI解析する最新研究を紹介します。

» 2023年11月30日 10時00分 公開

 交通インフラの問題では、都市や地域の情報を収集することが課題の1つとなっています。そこで、車両に搭載したIoTセンサーで取得した画像などのデータを利活用することが考えられます。膨大に得られる車載センサーのデータ処理にAIを適用することで、広域の情報を効率的かつリアルタイムに取得できます。

建材輸送車の事故を防ぐAI活用

 土砂や資材を大量に輸送する建設工事では、交通事故の抑止や安全対策が求められます。文献1では、スマートフォンを輸送車両のダッシュボードに設置して撮影した画像に、AIを適用することで、下図の危険事象を検出しています※1

 取得画像に、深層学習や画像処理を適用することで、道路形状や車線、周辺車両や歩行者の有無、対象までの距離を求め、その値があらかじめ設定した条件を満たすかどうかを判定し、危険事象を抽出しています。画像は、クラウドに送信され、クラウド上で解析した後Webサーバに連携し、インターネットを介してユーザーが確認できる構成となっています。

危険事象の検知例 危険事象の検知例 出典:※1

※1 「スマートフォンとクラウドベースAIの活用による事業用車両向けの交通危険事象検知の技術開発」Nontachai TITHIPONGTRAKUL,仲条仁,城山晃一,濱島彩織/AI・データサイエンス論文集3巻J2号p461-469/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2022年

連載バックナンバー:

“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト

本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。

 電柱の維持管理では、電柱が設置されている土地が、道路や歩道のような公有地であるのか、住宅や商業施設の敷地といった私有地かなどの「土地区分」を適切に把握しておく必要があります。電柱は、全国で3600万本にものぼるとされ、道路拡幅や地権者の変更もあるため、立地区分の確認には点検員による現場での目視が求められます。

 そこで、文献2では、車載の画像から電柱の立地区分を把握するAIを提案しています※2。下図の通り、電柱と土地区分をそれぞれ画素ごとに分類をする「セマンティックセグメンテーション※3」で求め、その結果を組み合わせて立地区分を分類しています。

電柱の立地区分を分類するAI 電柱の立地区分を分類するAI 出典:※2

※2 「ディープラーニングを用いた沿道画像からの電柱立地区分の自動判定」石ヶ守めぐみ,内堀大輔,渡邉一旭,風戸千紘,櫻田洋介/AI・データサイエンス論文集4巻3号p571-581/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2023年

※3 「“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(4):コンクリ構造物のひび割れAI点検で精度を上げるには?段階的手法の有効性」阿部雅人/BUILT/2021年

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