連載第21回は、交通インフラの事故防止や維持管理の諸問題を解決する目的で、車両搭載のIoTセンサーで取得したデータをAI解析する最新研究を紹介します。
交通インフラの問題では、都市や地域の情報を収集することが課題の1つとなっています。そこで、車両に搭載したIoTセンサーで取得した画像などのデータを利活用することが考えられます。膨大に得られる車載センサーのデータ処理にAIを適用することで、広域の情報を効率的かつリアルタイムに取得できます。
土砂や資材を大量に輸送する建設工事では、交通事故の抑止や安全対策が求められます。文献1では、スマートフォンを輸送車両のダッシュボードに設置して撮影した画像に、AIを適用することで、下図の危険事象を検出しています※1。
取得画像に、深層学習や画像処理を適用することで、道路形状や車線、周辺車両や歩行者の有無、対象までの距離を求め、その値があらかじめ設定した条件を満たすかどうかを判定し、危険事象を抽出しています。画像は、クラウドに送信され、クラウド上で解析した後Webサーバに連携し、インターネットを介してユーザーが確認できる構成となっています。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 AI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
電柱の維持管理では、電柱が設置されている土地が、道路や歩道のような公有地であるのか、住宅や商業施設の敷地といった私有地かなどの「土地区分」を適切に把握しておく必要があります。電柱は、全国で3600万本にものぼるとされ、道路拡幅や地権者の変更もあるため、立地区分の確認には点検員による現場での目視が求められます。
そこで、文献2では、車載の画像から電柱の立地区分を把握するAIを提案しています※2。下図の通り、電柱と土地区分をそれぞれ画素ごとに分類をする「セマンティックセグメンテーション」※3で求め、その結果を組み合わせて立地区分を分類しています。
※3 「“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(4):コンクリ構造物のひび割れAI点検で精度を上げるには?段階的手法の有効性」阿部雅人/BUILT/2021年
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