技研製作所が“圧入”DXで目指す売上高1000億円 東京〜高知の遠隔施工に成功2050年にディーゼル機ゼロへ(2/3 ページ)

» 2023年11月10日 07時27分 公開
[石原忍BUILT]

圧入施工をデジタルツインで再現して遠隔施工を実現

 これまでは、圧入機オペレーターの経験則に基づき、人の手で圧入中に微修正を加えていた。iNAVILINKでは完全自動化までには至らないが、1本の圧入サイクルで30%の自動化率が向上し、トータル65%の自動化が見込める。その結果、ジャイロプレス工法であれば、4人が現場に必要だったが、オペレーターが補助も担当すれば3人で済むとともに、属人化の排除による施工品質の安定ももたらされる。

「iNAVILINK」 「iNAVILINK」 提供:技研製作所

 一方のG-Lab Visionは、これまでのように6台のカメラによる複数視点確保の大掛かりな設備や操作遅延防止を考慮した特殊な通信設備を必要としない。圧入機の3Dモデルや杭の設計3Dデータ、LiDARでスキャニングした現場環境の点群データに、インプラント NAVIやIoTセンサーで取得する現場のリアルデータを重ね、地中も含む施工現場のデジタルツインでリモートコントロールが可能になる。

「G-Lab Vision」 「G-Lab Vision」 提供:技研製作所
専用操作盤を手に持ち遠隔操作を説明するDX推進チームリーダー岡真佐人氏 専用操作盤を手に持ち遠隔操作を説明するDX推進チームリーダー岡真佐人氏 

 発表会では、高知県にある技研製作所のテストフィールドと東京本社の会場をネットで結び、東京にいるオペレーターが600キロ離れた地点から、タブレット型の専用操作盤でデモンストレーションした。

 圧入施工のプロセスは、法線合わせ〜L/G構築〜推測領域圧入〜打下投入〜自走〜天端合わせの流れで、今回の自動化は、法線合わせ、L/G構築、天端合わせを対象とし、人力作業が必須の建て込みや吊具撤去、打下装置改修を除けば、ほぼ自動化されたことになる。施工品質は、現場で測定した値を設計値にAIが調整することで、水平位置で芯ズレ10ミリ以内、傾斜0.2度以内、高さ10ミリ以内に収まる。

画面右側が高知の現地映像で、左側がG-Lab Visionの3Dモデル。左上の数値は設計深度に対する杭の深度で、設計値に近づくように自動で調整される。左下の数値は圧力、回転トルク圧入機で、一番下の黄色または緑で安全性を示すアラート 画面右側が高知の現地映像で、左側がG-Lab Visionの3Dモデル。左上の数値は設計深度に対する杭の深度で、設計値に近づくように自動で調整される。左下の数値は圧力、回転トルク圧入機で、一番下の黄色または緑で安全性を示すアラート
遠隔施工のデモ 提供:技研製作所
遠隔施工の説明 提供:技研製作所

 岡氏は、「建機では既に遠隔化されている機体はあるが、圧入機はインフラ整備で本当に使えるかを見極めながら、現場適用を進めていく。テスト段階では、1370キロ離れている北海道と高知市をつなぎ、0.2秒のタイムラグだけで施工に成功した。遠隔化のメリットは、海外の現場支援もカバーすれば、現地人材の育成も不要になることだ」と説明した。

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