日立ビルシステムは、電気自動車からの給電で、停電時のエレベーターを稼働させる「V2X システム」をマンションや公共施設などを導入先に販売を開始した。
日立ビルシステムは、広域災害などで停電が発生した際、電気自動車からの給電でエレベーターの継続利用を可能にする「V2X(Vehicle to X)システム」を2023年7月20日に発売した。
日立ビルシステムは、システム開発の背景について、高層ビルやマンションなどで、停電時にエレベーターなどの共用部設備が使用できなくなる事態を回避するため、非常時電源として蓄電池などを整備する動きが進んでいるが、導入コストなどが課題となっていることを挙げる。そこで、近年、普及が進む電気自動車をビルの非常時電源として活用できる可能性に注目し、停電時に電気自動車からエレベーターに給電を行い、継続利用を可能とするV2X システムを開発しました。
V2X システムは、急速充電方式「CHAdeMO(チャデモ) V2H(Vehicle to Home)」に対応する電気自動車の充放電と、電気自動車から電力(直流電力)を取り出し、エレベーターなどのビル設備で使用できる交流電力に変換できる機能を持つ「Hybrid-PCS(Power Conditioning System)」、エレベーター制御盤と信号を送受信する「IF(Interface)ユニット」で構成されている。
平常時は、商用電源や太陽光発電による電気を電気自動車に急速充電する。停電が発生してエレベーターが運転止まった場合は、Hybrid-PCSと電気自動車を接続し、V2Xシステムを起動することで、電気自動車のバッテリーから直流電力を取り出し、三相200V の交流電力に変換してエレベーターに供給し、速やかに運転を再開する。
適合するエレベーターは、「標準型エレベーター アーバンエース HF」と「アーバンエース HF plus」の15人乗り(定格積載量1000キロ)以下。同機種の定格速度は分速45〜105メートルで、給電時は分速30メートルの低速運転となる。エレベーターの運転可能時間は、電気自動車のバッテリー容量やエレベーターの仕様などの諸条件によって異なる。実証実験では、バッテリー容量20kWh(キロワット時)で残量10%まで外部給電が可能な軽電気自動車を用い、6階建ての試験棟内のエレベーターで実施し、約15時間の連続稼働が証明されている。
別の機能では、電気自動車のバッテリー残量をモニターし、バッテリーが給電限界を迎える前にIF ユニットを介してエレベーターの制御盤に信号を送信することで、給電の停止による利用者のエレベーター内の閉じ込めも防ぐ。
また、Hybrid-PCSは、太陽光発電設備や蓄電池と連携する機能も有し、日立ビルシステムは、災害に対するレジリエンス向上とグリーン(環境)配慮を実現するソリューションとして、マンションや老健施設、公共施設を中心に、主に新築時のエレベーター導入に合わせて提案を行っていく。同時に、停電時の電気自動車の確保をはじめ、マンションなど導入時の課題に応じるために、カーシェアリングサービス会社などとの協創も進めていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.