アラームボックスは、1年以内に倒産する危険性がある“要警戒企業”の業種別ランキングをまとめた。建設関連では、電気業、設備工事業、職別工事業がランクインした。
AI与信管理サービスを提供するアラームボックスは、2022年6月1日〜2023年5月31日に収集した1万4688社/26万6495件のネット情報などから、1年以内に倒産する危険性がある“要警戒企業”を抽出し、「倒産危険度の高い上位10業種」を2023年6月21日に発表した。
■円安や燃料費高騰により、生産コストが増加したさまざまな業界で倒産が発生
■建設関連では、2位に電気業、3位に設備工事業、7位に職別工事業
■「2024年問題」に直面する運輸業で人材不足や利益減少により倒産リスクが大幅増
アラームボックスはこれまで企業の連鎖倒産を防ぐ取り組みとして、AI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」で倒産の事由や前兆とみられる情報を収集し、サービス利用者に提供してきた。そこで、“1年以内に倒産する危険性がある要警戒企業”を業界ごとに集計し、分析することで、取引先の与信管理でタイムリーな情報収集の重要性と活用法を啓発すべく、調査を実施し、発表に至ったとしている。要警戒企業とは、アラームボックスが収集したネット情報などを分析した結果“1年以内に倒産する危険性がある”と判断した企業を指す。
今回の調査では、円安や燃料費高騰により生産コストが増加した業種と、それらを主要取引先とする業種に倒産関連情報が多く発生。繊維工業と繊維・衣服など卸売業、農業と飲食料品卸売業といったように、同系列の業界内で連鎖する形での倒産も散見された。
また、高止まりした人件費の影響を受ける業種でも、倒産関連の情報が多かった。工事業や運輸業は人的コストが大きいうえに、人材不足による外注費の増加が採算性の低下を招いていた。特に運輸業は、これまで常態化してきた長時間労働が制限されることで労働力不足が懸念される「2024年問題」に直面しており、2022年以上に倒産が多く起きた。
調査結果の詳細によると、建設関連では、発電所、電力小売りなどの電気業は「106社に1社が倒産する危険性あり」と予測。過去の1〜2回目の調査でも2位にランクインし、今回も2位にランクインした。
電気業は、2016年の電力自由化で、発電所を持たない新電力と呼ばれる電力小売り会社が多く台頭したが、原油や液化天然ガスなどの燃料価格が高騰した結果、電力の仕入価格が高騰し、収益を圧迫している多くの事業者が、事業停止や倒産に陥っている。また、厳しい経営状況が影響してか、粉飾決算や金銭トラブルに関する情報も生じ、電気業の倒産リスクが高まる要因となっている。
3位には、電気工事業、管工事業などの設備工事業で、「126社に1社が倒産する危険性あり」。
設備工事業のうち、太陽光発電や空調設備の工事業者で、破産や支払い遅延が発生。設備工事業は小規模の事業者が多く、企業体力が頑強ではないため、人件費や資材価格の高止まりによる影響を受けたと考えられる。粉飾決算や代表者の資金持ち逃げによる信用失墜で資金調達難に陥っている企業も複数あり、設備工事業と取引などを行う際には業界内での取引先の評判を調べることも重要となってくる。
7位は、とび工事、内装工事、塗装工事、鉄骨工事などの職別工事業(設備工事を除く)で、「143社に1社が倒産する危険性あり」。前回調査でもランクインした職別工事業が7位に。
主に下請けとして内装工事や塗装工事を行う事業者に、事業譲渡や破産手続きの決定が起きた。識別工事業は元請業者よりも経営基盤が弱い下請業者が多く、人件費や燃料費の高止まりや建築資材の高騰、同業他社との価格競争などで利益率が低くなることで、倒産リスクが高まる傾向にある。
前回の調査でもランクインしていた7業種が、今回も10位以内に入った。7業種は、コロナ禍で需要が減少し、コロナ後も物価高や以前ほど戻らない需要で再建の見通しが立ちにくい企業が多く属しているため、倒産リスクが高止まりしている。特に、原材料の輸入や生産面で海外企業に依存する繊維工業や電気業、農業などは、円安や燃料費高騰の影響を大きく受けている。これらの業種が衣食住の基盤となるサービスを提供していることから、今後も状況が好転せず倒産が続けば消費者の生活にも悪影響を与えると予想される。
また、今回は資金繰りの悪化やそれに伴う粉飾決算といった情報が倒産前に発生していた企業が倒産に至るケースが散見された。さらに、コロナ禍の需要低迷から財政を立て直せない企業が息切れ倒産を起こしている様子もみられた。
コロナは5類感染症に移行され、社会は脱コロナの動きが加速化している一方で、ゼロゼロ融資の返済本格化や原価高騰が長期化することで、資金力のない中小零細企業の倒産が増加していくことが予想される。こうした不安定な市況で、企業は、取引先の継続的な与信管理を行うことが経営を安定化させる上で重要となる。
調査時期:2022年6月1日〜2023年5月31日
調査対象:アラームボックスでモニタリングしていた企業のうち、1万4688社
対象データ:アラームボックスで配信されたアラーム情報26万6495件
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