DADCは現在、Society 5.0実現を目指すプログラムの1つとして、スマートビルに関するシステムの枠組みを策定するアーキテクチャ設計に取り組んでいる。スマートビルを取り上げる理由について齊藤氏は、政府が進める「デジタル田園都市国家構想」でスマートビルに関するアーキテクチャ技術設計の方針が発表されたこと、民間企業からの依頼があったことの2つを挙げ、その進捗について「経済産業省他の関連省庁と民間企業、教育機関という官産学の叡智(えいち)を集結して、アーキテクチャ設計に取り組んでいる」と報告。
2026年頃までには全体施策およびロードマップの策定を目指す予定で、2022年9月20に開催された第1回「スマートビル将来ビジョン検討会」では、将来ビジョンとそれを実現するための基本対応方針を整理、2023年3月までにあと2回検討会を実施する予定だと話した(※2022年12月7日に第2回、2023年3月7日に第3回検討会を開催)。
DADCが考えるスマートビルが目指す姿とはどのようなものか?齊藤氏は、企画・設計・施工・保守といった通常のビルのライフサイクルを通じて、「デジタルデータによるDX」「デジタルツインを通じた継続的な建物価値向上のためのマネジメント」「さまざまな社会課題の解決」の3つを実現するとした。
将来は、人やモビリティ、ビルをはじめとする“フィジカルアセット”から収集したデジタルデータをもとに、リアルと仮想空間が連動するデジタルツインを作成。仮想空間上のデータをリアル世界のサービスに利活用することで建物の価値を向上させ、新たに創出するデータドリブンのサービスにより、建物利用者や建築/不動産/都市開発の関係者などのステークホルダーに利益や利便性をもたらす好循環を生む仕組みを目指すという。齊藤氏は、スマートビル同士の相互接続がスマートシティーの構成要素となることで、地域の活性化や社会的課題の解決につながると期待を寄せる。
最後に齊藤氏は、スマートビルの将来ビジョンをステークホルダーごとに整理。建物利用者にとっては、「空間に新たな価値が付与されるビル」で、建築/不動産の関係者にとっては、「デジタル技術によるプロセスが自動化され、価値が高まり続けるビル」。都市開発関係者(デベロッパー、投資家)にとっては、「都市のリソースを流通させ地域環境を活性化するビル」が、それぞれ目指すべきスマートビルの未来像だ。
齊藤氏は、スマートビルの未来像を具現化するアーキテクチャを設計することで、「最終的にビルに人が集まる環境を作り上げ、さまざまなプロセスの自動化による働く人の業務効率化、不動産や地域の価値の継続的な向上によって、地域全体の最適化を実現し、新たな投資につなげたい」との意欲を示し、次の登壇者のDADC プロジェクト部 中村公洋氏にバトンタッチした。
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