全社一丸で“西松DXビジョン”を目指す西松建設に聞く、600TBものデータ共有術とは?クラウド(2/3 ページ)

» 2023年03月24日 17時17分 公開
[BUILT編集部BUILT]

社外関係者との情報共有では該当フォルダに招待するだけ

西松建設 DX戦略室 ICTシステム部 ICTインフラ課 副課長 脇真人氏 西松建設 DX戦略室 ICTシステム部 ICTインフラ課 副課長 脇真人氏

 クラウドストレージはBox以外にもあるが、Boxを選んだ理由を西松建設 DX戦略室 ICTシステム部 ICTインフラ課 副課長 脇真人氏は、“使いやすさ”を挙げる。

 以前は、現場事務所に設置したNASのバックアップ先として、他のクラウドストレージを利用していた。しかし、前のクラウドでは、「格納したデータを現場の社員がすぐ取り出せるような環境ではなかった」(脇氏)。

 その点、Boxはデータの操作が簡素化されており、社員は必要なデータにストレスなくアクセス。また、外部スタッフや協力会社などへの権限付与も含めたデータ共有の設定も手軽にできる。導入の検討では、こうした部分が評価されたようだ。データ共有は、日常的に利用する機能のため、ストレスがなく、手軽に扱えることは業務効率化を図るうえで欠かせないポイントとなる。

 例えば、協力会社をはじめとする社外の関係者と情報を共有をしたい際は、Box内にある該当フォルダに対して“招待”するだけで済み、フォルダへのアクセス可能な期間は任意に設定できる。さらに、担当する工事が完了した人には、データ共有を終了して、工程や案件などそれぞれの利用環境に応じた使い分けができる。2022年10月時点で、社外のユーザーをフォルダに招待して共有した人数は4792人に達し、添付ファイルの代わりにリンクを発行して共有しているのは週平均で1400件とのことだ。

2023年1〜3月のBoxへのフォルダ招待数(左)と共有リンク数(右)の推移 2023年1〜3月のBoxへのフォルダ招待数(左)と共有リンク数(右)の推移
西松建設 DX戦略室 情報システム課 越智雄士氏 西松建設 DX戦略室 情報システム課 越智雄士氏

 西松建設 DX戦略室 情報システム課 越智雄士氏は、Boxのモバイルアプリの使い勝手にも言及。ここ数年で、iPadやiPhoneなどに代表されるモバイルデバイスが建設現場に普及した。そのため、Boxではモバイルデバイス用アプリで、その場でデータ参照可能な環境を用意している。

 建設業では、日常的に現場と事務所の往復など移動することが多く、Boxを介してスピーディーにデータアクセスするモバイル環境は、現場での業務負担の軽減に役立っている。

「Box Sign」と「Box Relay」で決裁処理の紙とハンコからの脱却

 西松建設では、Boxを使った情報共有の他に、Boxの機能を使った捺印(なついん)書類の電子化を全社で進めている。その機能とは、「Box Sign(ボックス サイン)」と「Box Relay(ボックス リレー)」だ。

 Box SignはBoxのWebアプリから電子署名が行え、Box Relayはワークフローの自動化につながる。双方を組み合わせることで、管理者や決済者によるさまざまな承認のペーパーレス化が実現する。

 堀氏はBox Relayについて、「社内書類の捺印を無くす目的で、2年前から利用している」と話す。建設業では、これまでさまざまな社内稟議の決裁処理を紙とハンコで行ってきたが、その都度、書類に捺印が必要なため、現場と本社や事務所を日々行き来する無駄が生じていた。Box SignとBox Relayの連携により、紙やハンコが不要となり、その場でシームレスに処理できるため、ハンコをもらうために走り回ることもなくなる。

 現在、西松建設でBox Relayが特に現時点で活用しているのは、人事の異動通知とのことだ。かつては、人事異動には上司が捺印した書類が人事部門に送られていたが、今では書類そのものが無くなり、全てBox内で完結している。

これまでの文書作成から保管までのライフサイクル これまでの文書作成から保管までのライフサイクル
Boxで全て完結するようになった文書のライフサイクル Boxで全て完結するようになった文書のライフサイクル

 他にも捺印関係では、外部との契約でも利用している。ハンコを押すまでに至る書類作成、稟議、決裁、保管はペーパーレス化し、Box内だけでほとんど完了してしまうため、契約を締結するまでの時短に加え、プロジェクト進捗のスピードアップにつながっている。

 こうした契約の電子化により、各種書類を日常的に取り扱う総務部門の負担も減った。これまでは毎日増えていく書類の中から必要なものを探すのも手間だったが、クラウド上を検索するだけで探す手間も省ける。Box利用で紙ベースの管理から、文書作成から、稟議や決裁、保管、破棄または保存まで、文書のライフサイクル全てが電子データに代わったことで、作業効率が格段に最適化した。

 また、建設業務では計画中の図面や契約書など社外秘のデータを扱うことが常だが、Boxのセキュリティ機能「Box Shield」で、データアクセス権を制御したり、アカウントの侵害やデータの盗難といった脅威を検出したりするセキュアな環境下で管理しているため、安全性は保持される。

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