パナソニック 空質空調社とヤンマーエネルギーシステムは、分散型エネルギー事業で協業することを決めた。両社が共同で取り組む分散型エネルギーシステムとは、電気を使用する場所の近くで発電することで送電ロスや廃熱の無駄を抑えて電力を供給する仕組み。エネルギー分野で、世界がかつてない規模の変革期に直面する今、注目を集める技術とされている。
パナソニック 空質空調社とヤンマーエネルギーシステムは2022年12月1日、新たな分散型エネルギー事業の開発・販売で協業していくと発表した。
パナソニックとヤンマーは、カーボンニュートラルに向けた「環境経営」の姿勢でも共通点を持つ2社だ。両社が手を携えて取り組む新事業──それも現在、もっとも注目度の高いカーボンニュートラルがテーマのため、記者発表が行われた東京/大阪の2会場は熱い熱気に包まれていた。
最初に登壇したのは、パナソニック 空質空調社の社長でパナソニックの副社長執行役員も務める道浦正治氏。道浦氏は協業にかける思いを語った。
道浦氏は、「コロナ危機からの回復と脱炭素社会の両立へ向け、世界は現在難しい課題に直面している。カーボンニュートラルヘ向う流れのなか、エネルギー需給不安も高まり、地殻変動にも似たエネルギー分野の大変革期にある。だからこそ、自社の強みを生かし、この分野で“お役立ち”を広げていかねばならない」と語る。そして、そのための重要なチャレンジの1つが、今回のヤンマーとの協業となる。
パナソニックにとっては、「街」領域の環境負荷低減を目指す空調システムの取り組みと位置付け、その核となる低環境負荷空調システムが、水を冷媒とすることで温室効果ガスを排出せずに冷房運転可能な「吸収式冷凍機」となる。
冷凍機は熱源の違いで2タイプに分けられる。1つはガスを熱源とする直下式冷凍機で、大規模事業者に数多く採用されてきた。「だが、今後は捨てられる熱を有効活用する廃熱利用型を中規模の病院や工場、公共施設などで広く活用してもらえるように努めることが自分たちの責務だ」と道浦氏は説明する。その普及拡大の鍵が、発電機で電力を生み出し、その際の排熱を再利用するシステム「コージェネレーション(熱電併給)システム」との連携となる。
コージェネレーションで発電し、再発生した熱をパナソニックの吸収式冷凍機で無駄なく使い切れれば、エネルギー効率向上という顧客価値にも直結する。そのためには、コジェネメーカーとの協業が不可欠であり、そのベストパートナーとしてヤンマーに白羽の矢が立った。
ヤンマーホールディングスのCEO 山本哲也氏は、110周年を迎えたヤンマーグループでは、「A SUSTAINABLE FUTURE」と呼ぶ、持続可能な社会の実現が存在意義と語り、「2050年までに温室効果ガスをゼロにし、環境負荷フリーの企業になる」との目標を提示した。
目標達成のために当面は、エネルギー事業の強みを生かした効率的なエネルギー活用の普及を進めていく。エネルギー活用分野を担うのが同社のエネルギーシステム事業であり、特に省エネやCO2削減などの課題解決に向けたトータルエネルギーソリューションの大きな柱がコージェネレーションシステムと位置付けている。
電気と熱を発生するコージェネレーションシステムは、廃熱を再度利用することで総合利用として80%もの高い総合効率を実現する。ヤンマーのマイクロコージェネレーションシステムは、中規模事業者に最適な商品として国内トップクラスのシェアを誇る。病院や老健施設、飲食店、下水処理場、食品工場などで、廃棄された食品残渣(ざんさ)をメタンガスに変えて発電利用するなど、幅広い活用により、販売以来で累計1万台の実績がある。
コージェネレーションシステムそのものの価値向上は、「廃熱を使い切ることが最重要で、その意味でパナソニックの吸収式冷凍機との連携は最適解だ」と山本氏は話す。
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