清水建設は東洋スタビと共同で、改良対象地盤に溶融スラグとバイオ炭を混入することで、施工に起因するCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素型地盤改良工法を開発した。今後は、新工法の地盤改良工事への適用を促進し、カーボンニュートラル社会の実現に寄与する考えだ。
清水建設は2023年1月13日、東洋スタビと共同で、混合処理工法による地盤改良工事のカーボンニュートラル対応技術として、改良対象地盤に溶融スラグとバイオ炭を混入することにより、施工に起因するCO2排出量を実質ゼロにする脱炭素型地盤改良工法を開発したと発表した。
混合処理工法による地盤改良工事のCO2排出量は、固化材として利用するセメント量の多寡に左右される。溶融スラグの混入により、改良対象土の土性が改善すればその分、要求強度の充足に必要なセメント量を抑制できる。
ところが、バイオ炭はバイオマス原料を不完全燃焼させて炭化したもので、木材から生成したバイオ炭には、木が光合成で吸収したCO2が固定されている。農業分野では、「バイオ炭の農地施用」が国のJ−クレジット制度の対象として認められており、バイオ炭によるCO2貯留量が環境価値としてクレジット化されている。
開発した工法では、セメント系固化材によるCO2排出をバイオ炭による炭素貯留で埋め合わせ、施工時のCO2排出量を実質ゼロにする。バイオ炭の使用量を増やすことにより、CO2の排出削減量と固定量の合計が排出量を上回るカーボンネガティブの実現も見込めるという。
施工の際は、改良対象地盤の上に溶融スラグやバイオ炭、セメント系固化材を敷き均した後、混合撹拌機でかく拌して締め固めることで、要求強度を充足する地盤を構築する。溶融スラグの混合量は改良対象土1立方メートルあたり550〜1750キロで、セメント系固化材の使用量を既存工法と比べて約60%削減する。炭素貯留に利用するバイオ炭の混入量は改良対象土1立方メートルあたり10〜30キロで、溶融スラグはセメント系固化材よりも安価なため、約30%のコスト低減効果も見込める。
新工法では、高温で溶融させた焼却灰などを冷却し、固化した溶融スラグを混合することで粘性土の土性を改善し、製造時に多量のCO2を排出するセメント系固化材の使用量を低減する。加えて、固化材使用量の製造に伴うCO2排出量を、バイオ炭に吸収し、固定化されたCO2量と相殺することで施工のカーボンニュートラル化を実現する。
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