建設業界では技術者や技能者の高齢化に伴う技術承継が課題となっている。そのため、ここ数年はMRやARといったxR技術を用いて、経験の浅い従業者であっても現場作業の工程を分かりやすく伝達したり、効率的に必要なノウハウを教えたりするツールが各社に導入されつつある。
インフォマティクスは、「建設技術展2022近畿」(会期:2022年11月9〜10日、インテックス大阪)で、建設業界が抱える技術承継の課題解決に向けてMRやAR技術を活用して建設現場を支援するツールやサービスを展示した。
建設現場では慢性的な高齢化や人手不足が深刻化し、業務の効率化やベテラン技術者のノウハウ継承はすぐにも取り組まなければならない課題となっている。こうしたなかで解決策として注目されているのが、空間を認識してデジタルオブジェクトを現実空間に配置する「MR(複合現実)」や空間認識はせずにカメラ画像にオブジェクトを重ねる「AR(拡張現実)」の技術を用いて、図面や3Dデータを視覚的に共有するサービスだ。現場に居ながらにして情報共有が簡単にできるため、施工の円滑化や経験の浅い技術者のスキル向上などに役立つと期待されている。
インフォマティクスはこうしたニーズに対応できるソリューションとしてMRシステム「GyroEye Holo」を提供している。既存のMRデバイス「Microsoft HoloLens 2」と「Trimble XR10」に対応し、2D CAD図面やBIM/CIMモデルなどを実寸大でデバイスにホログラフィック映像として投影できる。
活用シーンとしては、出来形確認や施工支援、遠隔検査、設備点検、新人教育、トンネル施工管理、橋梁(きょうりょう)部材の確認、合意形成などの各場面で実績がある。例えば、工事で部材の取り付け位置を決める墨出し作業では、施工モデルをMRデバイスのレンズ部分に投射し、墨出しする箇所や施工工程などを立体的に把握できる。
オプション製品も充実しており、遠隔臨場をサポートする「XRoss野帳」、iPad/iPhoneでMRを活用できる「GyroEye iOSビュワー」、クラウドでコンテンツを管理できる「GyroEye CMS」、位置情報を補足する「GyroEye HoloTS+」など、多様なニーズや製品の拡張に応えるサービスも用意している。
今回のブース展示で来場者に対応した説明員は、「GyroEye Holoは特定業務のサポートに特化しているのではなく、顧客のニーズに合わせて提供できる」と話す。
展示ブースでは参考出展として、タブレット端末用のAR技術を活用した現場支援アプリ「ARナビ/GC現場支援タブレット」も紹介した。
ARナビ/GC現場支援タブレットは、屋内の非GPS環境での利用を想定しており、既存のiPadでアプリを起動し、設備点検の対象フロアに貼ってあるQRコードを読み取れば、ナビゲーションが開始される。タブレットのカメラで撮影したリアル空間上に表示される案内ルートに従って、対象の設備機器にたどり着き、機器のQRコードをスキャンすると点検項目が示されるため、経験や熟練度に依存せずに誰でも容易に作業が行える。点検済みや未点検の箇所も一目で分かる仕様で、点検漏れも防げる。
また、AR機能では、撮影した空間上にさまざまなオブジェクトを配置できるので、点検箇所にカメラをかざせば、過去の点検記録をひもづけて参照したり、建設機械のオペレーションでも操作方法のマニュアルをその場で閲覧したりすることにも役立てられる。
従来は、点検手順や機械の操作方法などは、口頭の説明や紙ベースのマニュアルを見ながら作業する必要があった。その点、ARであれば、現実空間上に必要な説明を付与することが可能なため、未熟な技術者や技能者であっても、すぐに現場作業に必要な情報に即座にアクセスできる利点がある。
説明員は「現場の方々に話を聞くと、ベテランのノウハウ継承への懸念をかなり気にされている。そうした暗黙知の経験を伝えるソリューションとして、反響を得ている」と説明する。
その他に展示製品では、現場点検で撮影した写真とその位置情報を共有できるアプリ「Share Snap」もPR。現地調査と点検業務支援、遠隔地との情報共有の機能を1つに集約させたアプリで、点検作業の位置や方向、時間といったデータをクラウド上でリアルタイムに共有。点検後の報告書作成をスマートフォンで完結させられ、ペーパーレス化の実現と技術者の負担を減らせる。
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