さらに2023年には次弾で、慶應義塾大学 KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同開発したより広い49平方メートルのRC造平屋住宅「フジツボモデル」を約500万円で販売する予定だ。フジツボモデルは、発表直後から、子育てや仕事を終えて再度2人暮らしとなる60代の高齢夫婦から、終の棲家としての問い合わせが多く寄せられている。
飯田氏は、「若い時に買った2〜3階建ての家は古くなると住みにくい。かといってリフォームには1000万円以上が必要だし、高齢者は賃貸住宅を貸し渋られることも少なくない。そうしたニーズをすくい取る形で、500万円の低価格フジツボモデルが受け入れられているのでは」と分析する。
セレンディクスに独自性があるのは、3Dプリンタそのものが大型のために、屋根も含めて、家1棟を丸ごとそのまま出力できる点にある。もし、災害発生後、復旧住宅としてSphereを早急に建てる必要が生じれば、プリンタ自体をけん引して現地でプリントすることもあり得る。
セレンディクスでは、3Dプリンタのマシンとしてオランダの「TAM(Twente Additive Manufacturing)」の製品を採用。TAMのプリンタは、ロボットアーム型の3Dプリンタとして世界最大クラスとなる1台で60平方メートルまでの出力に対応している。小規模の3Dプリンタを用いる他社と、セレンディクスの違いはここにある。
TAMのプリンタは、3Dプリンタ出力方法にも特徴がある。材料を積層することで立体を作る通常のロボットアーム型の3Dプリンタでは、屋根のような外へせり出しているオーバーハング部分の造形が難しい。しかし、TAMの3Dプリンタは、他プリンタの出力限界を超えたオーバーハングのプリンティングにも応じられる。こうした3Dプリンタ自体の高いスペックが、セレンディクスの提案する3Dプリンタ住宅の1種類に限らない多様なライアンアップや複雑な形状を可能にしている。
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