1.情報の共有化
建設現場の業務は、調査、設計/施工計画、施工、検査など、多くの工程に分かれています。これまでは、工程ごとに業者が異なるため、それぞれ独自のシステムが使用されるなど情報の共有化や相互活用が難しいとされていました。
近年は、BIM/CIMを活用して建設生産プロセスの初期工程から3次元モデルを導入し、事業全体の関係者の情報共有やデータ活用が進んでいます。現在は、公共事業系での活用が中心ですが、今後のさらなる利用拡大が期待されています。
2.コミュニケーションの活性化
近年の通信技術は急速に進歩しており、特に“5G”通信により、スマートフォンで高解像動画をオンラインで簡単に視聴できるようになりました。
現場にタブレットなどを持ち込んで、現場と事務所間で音声だけでなく、映像をやりとりするなど、遠隔地とのコミュニケーションの活性化や高度化が普及しつつあります。現場での試行が進んでいる「遠隔臨場」は、その最たる例といってよいでしょう。遠隔臨場で現場に行く回数を減らすことができれば、移動時間や費用も削減できるのでコスト面での削減効果も期待できます。
3.作業効率の向上(省力化、省人化)
建設現場では検査を行うだけでも、準備から立会、帳票作成までのフローがあるように、現場作業には、人手の掛かる煩雑な作業が数多く存在します。こういった作業に対し、デジタルカメラやセンサーデバイス、収集した情報を分析・解析するソフトウェアなどを使って、省力化、省人化を実現しようとする試みが行われています。近年ですと、配筋検査を対象に、さまざまなメーカーがシステム化を表明しています。
また、「危険な作業をロボットにやらせよう」といったロボットアニメ世代にとってはワクワクするような取り組みもあり、建設ICTからは目が離せません。
こうした3つの相乗効果により、管理作業の軽減、手戻り作業の減少、全工程の短縮化が期待されているわけです。
しかしながら、現場業務で生産性や効率化だけを優先して労働安全性が損なわれることがあってはいけません。やはり生産性と安全性の両方を地道に積み上げていく必要があり、建設ICTはこれを効率よくサポートするツールなのです。
期待の大きい建設ICTですが、日本よりも海外での製品化や導入が進んでいる印象があります。特に米国では、建設業をターゲットとしたスタートアップ企業が数多く存在し、先端技術を用いたさまざまなシステム、サービスが生まれています。これは、米国のインフラ老朽化と建設技術の有識者減少(後継者不足)をきっかけに建設ICT市場が活性化したといわれており、現在の日本と同じような状況が一足先に米国で起こっていたということです。当社も海外製品を取り扱うことが多くなっており、海外での建設ICTの動向なども連載で触れていきたいと考えています。
これまで煩雑とされてきた現場の検査・検測業務がスマートデバイスやセンサーの発達で、省力化が実現されつつあり、生産性の向上が期待されています。そこで次回は、国土交通省の動きや現場で使われるデバイスやセンサーの解説なども交えて、検査・検測業務を対象とした建設ICTをテーマに採り上げます。
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