清水建設は、これから原発の廃止措置が本格化することを見据え、BIMの属性情報を活用して建屋内のコンクリ部材汚染を3次元で可視化することで、解体計画を立案する期間の短縮とトータルコストの削減を目指す。
清水建設は、原子力発電所の廃止措置(廃炉)におけるエンジニアリング業務の効率化とトータルコスト削減を目的に、BIMを活用して一連の業務を代替する支援システム「Deco-BIM」を開発したと2022年9月29日に発表した。
日本国内では、東日本大震災を契機に、2012年までに全54基の原子力発電所が運転を停止。その後、安全対策工事などを経て、10基が再稼働に至ったものの、24基が廃止措置中または廃止を決定しており、今後は廃止措置が本格化することが見込まれている。
廃止措置は、使用済み燃料の搬出から、最終段階の建屋解体に至るまで、30〜40年にも及ぶ長い期間を要すため、上流の段階で廃止措置エンジニアリングを的確に行い、綿密な計画を立案する必要があるとされている。
清水建設が担う廃止措置エンジニアリングは、原子炉建屋や原子炉格納容器を構成するコンクリート部材の放射能汚染レベルの評価、汚染レベル別の廃棄物量の算定、解体計画の立案、作業員の被ばく量を勘案した解体工事の工数や工期の算定、廃棄物の処分費用を含むトータルコストの評価など、多岐に及ぶ。しかし、原子力発電所の建屋は構造が複雑なため、こうしたエンジニアリングを2次元の図面や資料をベースで進めると、膨大な手間と時間を要してしまう。
そこで清水建設は、エンジニアリング業務の効率化と高度化を図るために、BIMの属性情報を活用したエンジニアリング支援システムのDeco-BIMを開発するに至った。
Deco-BIMの適用にあたっては、初めに既存図面をもとに作成するBIMモデルと、別途で3次元解析する独自システムを用いたコンクリート部材の放射化計算結果とをデータ連動させ、計算結果をBIMの属性情報として取り込む。続いて、解体工法の基準工数(歩掛)や空間線量率、処分費用の算定式などのパラメータを入力し、システムのデータベースを構築。最後に、技術者が3次元で可視化されたコンクリート部材の汚染分布やレベル(レベルII、レベルIII、CL:放射性廃棄物として扱う必要のないもの)を考慮して、部材の切断、破砕などの解体工法を選択する。例えばワイヤソー切断であれば、切断寸法やワイヤを通す孔の間隔など詳細な解体条件をシステムに入力する。
Deco-BIMは入力された情報から、汚染レベル別の廃棄物量や作業員の被ばく量を勘案した解体工事の工数や工期などの諸計算を行う。
2次元の図面や資料に基づく検討期間に比べると、5分の1程度で済むようになり、同じ検討期間内に圧倒的に多くの解体計画を立案して評価できるので、トータルコストの削減にも寄与する。また、工事段階では、廃棄物に割り振られるIDをBIMデータに紐(ひも)づけることで、長期にわたった廃止措置のトレーサビリティーが確保できる。
清水建設は今後、電力事業者に対してDeco-BIMを活用し、合理的な解体計画を提案して、廃止措置の計画段階でのプロジェクト参画につなげる。
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