BIMを活用し原子力発電所建屋の設計業務を効率化する新システム、清水建設BIM

清水建設は、原子力発電所建屋における構造設計業務の効率化に向け、BIMをベースとする設計業務統合システム「NuDIS-BIM」を開発した。今後は、NuDIS-BIMの機能を拡充し、施工・維持管理業務への適用を図るとともに、クリーンなエネルギー施設の建設を通じSDGs達成に貢献する。

» 2022年07月15日 13時00分 公開
[BUILT]

 清水建設は、原子力発電所建屋における構造設計業務の効率化に向け、BIMをベースとする設計業務統合システム「NuDIS-BIM(Nuclear Design Integration System on BIM)」を開発したことを2022年7月12日に発表した。

構造解析モデルを自動構築するアルゴリズムを構築

 原子力発電所建屋の構造設計業務は、システム化が進んでいるが、構造技術者の知見に依存している部分が多く、システムへのデータ入力やヒューマンエラーを回避するためのチェックなどに手間と時間を要している。

 一方、原子力発電所の建屋は、巨大かつ複雑な形状をした部材で構成されており、多くの設計プロセスが必要なだけでなく、設計データが非連動で2次元の設計データ上で各種の検討も求められる。

 そこで、清水建設はNuDIS-BIMを開発した。NuDIS-BIMは、BIMを活用して一連の設計業務をデータ連動させる。

「NuDIS-BIM」の位置付け 出典:清水建設プレスリリース

 具体的には、設備機器・配管および建屋構造体の干渉検知、構造部材である壁、床、柱、梁(はり)の配置と断面スケールの最適化、構造解析モデルの自動構築、部材配筋検討の情報、建屋構造設計図面を自動で出力する各システムを連動し、統合する他、BIMの構造モデル上で各システムを稼働する。

 NuDIS-BIMを適用した設計の手順は、最初に機電メーカーがBIM上で設備機器配置計画図を作成するとともに、建屋の躯体形状や必要な放射線遮蔽性能を提示。

 次に、清水建設の技術者が同じBIM上で、床、柱、梁などの配置や大きさを扱った構造計画の妥当性、設備と躯体の干渉における有無を検証し、構造BIMモデルの形状を確定する。続いて、構造BIMモデルのデータを解析用の3次元モデルに自動変換し、地震応答解析などの本解析により建屋の構造安全性を検証。

 最後に、解析結果から算出された必要な鉄筋本数などの部材断面情報を構造BIMモデルにフィードバックすることで、建屋の構造BIMモデルが完成する。完成したBIMモデルからは、構造躯体図(平面図・断面図)、配筋リストなどの構造図を自由にアウトプットできる。こうしたデータ連動により、原子力発電所建屋の設計期間を約2カ月(10%)短縮する見込みだ。

「NuDIS-BIM」の設計プロセスの比較 出典:清水建設プレスリリース

 NuDIS-BIMの開発にあたっては、原子力発電所建屋の部材断面が非常に大きく、複雑な開口を有する壁や床などの構造特性を反映した構造解析モデルの自動構築がポイントとなった。

 さらに、建屋の構造解析では、壁、床、柱、梁といった各要素間の構造的な連続性の担保など、これまで構造技術者が解析モデル構築時に検討してきた事項のデータベース化を進め、構造解析モデルを自動構築するアルゴリズムを完成させた。

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