講演の終盤では、建設業界のDXを推進するために建機制御に関する「標準プラットフォーム」の必要性を説いた。
現在の建設業界では、施工会社と建機メーカーがタッグを組み、新しい技術を開発するのが一般的だ。その理由は、工事に関しては施工会社がノウハウを持っているので、建機メーカーが独自に建機を開発できないためだ。
しかし、このような環境では、施工会社Aと建機メーカーBとの共同の研究開発は、施工会社Aが違う建機メーカーCと協業した場合には、全てがやり直しになってしまう。
しかし、施工の現場では多数のメーカーで製造された建機が稼働しており、単独のメーカーのみで現場を構成することは難しい。そのため、自動化に際してロボットやAIを導入するにしても、それぞれのITベンダーの技術者が各現場に合わせて、“再発明”を行うことになってしまう。建機メーカーにしても、各施工業者と最初から開発に着手するので、ビジネスが一社としかできない。
問題を解消のため、東京大学も参画しながら土木研究所が中心となって、「標準プラットフォーム」の整備が進められているという。
標準プラットフォームは、施工会社と建機メーカーの間に置かれ、統一された制御信号で施工会社と建機メーカーがやりとりできるようにするもの。協調領域を設けることで、ゼネコンで異なるメーカーの建機を制御できるソフトの開発に集中できる。建機メーカー側でも施工業者ごとの対応が不要になる。
プラットフォームが導入されると、同一の現場で異なるメーカーの複数建機を同一のシステム上で制御できるようになる。永谷氏は、この仕組みは国土交通省でもプッシュされており、2022年3月には「建設機械施工の自動化・自律化協議会」も発足していると補足し、講演を終えた。
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日立建機が自律型建設機械の開発を容易にするシステムプラットフォームを開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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