西松建設らがジオポリマーを用いた建物の建設に向け研究会を発足産業動向

西松建設は、北九州市立大学とともに、ジオポリマーを用いて建物を建設するために「浮遊選鉱法によって改質した燃焼灰を使用したジオポリマーコンクリートによる実建物の実証研究会」を発足した。今回の研究会では、ジオポリマーを建築物へ適用するために、法律上の課題を整理するとともにその材料特性や製造と施工の方法、費用などの検討を行い、2025年度に実建物の建設に適用することを目指している。

» 2022年09月27日 13時00分 公開
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  西松建設は、北九州市立大学とともに、ジオポリマーを用いて建物を建設するための研究会を発足したことを2022年9月9日に発表した。

材料であるバイオマス灰の提供は響灘エネルギーパークが担当

 ジオポリマーは、産業副産物である「フライアッシュ」や「高炉スラグ微粉末」などを特殊な溶液で固化させた新しい建設材料。ジオポリマーで構造物を建設すると、セメントで建設するケースと比較して、約80%のCO2を減らせると試算されており、低炭素社会の実現に貢献する材料として注目されている。

 一方、西松建設では、2010年にジオポリマーの開発をスタートし、2次製品への利用などの普及を進めている。しかし、建築物に構造材料として利用する際には、品質や性能などの技術的課題を解決するだけでなく建築基準に適合する必要があり、ジオポリマーを建築材料として使用するためには、技術的問題の解消と可能な範囲で構造物などへの施工実績を積み上げなければならなかった。

 そこで、西松建設は、北九州市立大学とともに、福岡県リサイクル総合研究事業化センター※1の支援を受け、「浮遊選鉱法※2によって改質した燃焼灰を使用したジオポリマーコンクリートによる実建物の実証研究会」を2022年5月に発足し、同年の夏に活動を開始した。

※1 福岡県リサイクル総合研究事業化センター:循環型社会を構築するために、産・学・官・民が連携して行うリサイクル技術と社会システムの研究開発やその展開を支援する研究機関。新規性があり実用化が見込まれる研究テーマを公募し、採用したテーマについては、研究費用の助成やコーディネーターの助言といった支援を実施している。

※2 浮遊選鉱法:バイオマス灰を改質する技術で、灰と水を混ぜ合わせた溶液に、灯油とマイクロバブルを用いて未燃炭素を除去する。

「浮遊選鉱法によって改質した燃焼灰を使用したジオポリマーコンクリートによる実建物の実証研究会」の体制図 出典:西松建設プレスリリース

 今回の研究会では、ジオポリマーを建築物へ適用するために、法律上の課題を整理するとともにその材料特性や製造と施工の方法、費用などの検討を行い、2025年度に実建物の建設に適用することを目指している。

 具体的には、北九州市環境局グリーン成長推進部環境イノベーション支援課が、建築に関する技術基準の適合や建設する建物の使用用途に関する助言を担当し、響灘エネルギーパークは材料であるバイオマス灰の提供を担う見込みだ。

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